聖夜-3
ふわりと広がるスカートがおさまりつく時、涼子ちゃんの顔は近くにあった。
お互いしばらく惚けていたが、見つめ合ったことに気付くとあたしたちは目をそらす。心なしか脇目に見える涼子ちゃんの顔は赤くなっていた。あたしの顔も熱くなっているのはだろうと思う。それはあたしの想いによるものだから。
『涼子ちゃん』
あたしは涼子ちゃんの顔を見ると、彼女もあたしを見ていた。何だかその様がおかしくて自然と笑みがこぼれる。そして本当に彼女の事が好きなんだなって思う。
『彩夏さん?』
二人の間の時は止まる。あなたの声は時を壊して世界を創る。
だってほら、こんなに近くてこんなに暖かくて、こんなに愛しいのは貴方だけ。だからあたしは貴方に誓う。
『涼子ちゃん。あたし貴方が好きなの。友達としてじゃなくて、それ以上にあたしは涼子ちゃんの事が・・・』
言葉にならない。喉が熱い。考え付くのは悪いことばかり。あたしってこんなに弱い人間だったのかと思うくらいに。
けれど、沈黙していた時は動きだす。他でもなく目の前の涼子ちゃんの言葉によって。
『あたしも好きよ。』
つないだ手に引き寄せられ、彼女の口元はあたしの耳に触れるくらいに近い。『彩夏が好き。』
言葉は言葉以上の力になってあたしの心を打ち抜いていた。そしてあたしは涼子ちゃんに抱き締められる。
『馬鹿。あたしが先に言おうって思っていたのに、ずるいよ彩夏』
確かに感じる彼女の暖かさと耳元でささやかれる声。
『だってあたし、恥ずかしくて自分のことだけで精一杯だったんだから』
あたしはそばにいることを確かめるように彼女の身体を引き寄せ、髪に顔を掠める。
『何?彩夏。そんなにあたしのこと好きなの?』
あたしの手を撫でながら、涼子は言った。
『そうよ。あの時、夏のお祭りの時だって涼子に見とれていたの。本当に綺麗なのは花火なんかよりも貴方よって思っていたの。あたしって馬鹿でしょ?』
『馬鹿なわけないじゃない。だってあたしも同じ事思っていたのよ。』
涼子の手がまたあたしの髪を撫でてくれる。
『じゃあ、あたしたちきっと二人とも馬鹿なのよ。お互いのこと好きすぎて。』
涼子の言うとおりあたしたちは馬鹿な事をしているのかもしれない。
それでもしばらくは二人で笑いあう事を許してほしい。いつの日かと同じ星空の下で。互いの暖かさを感じながら。あたしはそう願っていた。
Fin