聖夜-2
駅から大して歩かないであたしたちは目的のお店についた。
『どうかな?彩夏さん。こういう感じのお店ってお洒落でいいと思わない?』
そこは町の大通りから少し外れた場所にあった。
『うん。すごい素敵。涼子ちゃんが来たがっていた理由もわかるよ。』
外見は石が積み上げられて作られているものの、柱などは木で作られていた。一見ミスマッチのように思えるこの外観があたしに好感をもたしていた。
『涼子ちゃんって確かどこか外国のこういう建造物とかって興味あるんだよね?』
あたしは以前バスの中で話していたことを思い出して聴いた。
『うん。まあね。それもあってこのお店に興味もったんだ。じゃあ、行こうか?』
先導して歩いていた涼子ちゃんはあたしと繋いでいた手と反対側の手でお店の入り口の扉を開いた。その古風な外観と同様に自動扉ではなかった。
結局、涼子ちゃんとずっと手を繋いできてしまった。あたしはまるでこれが本当のデートのように思っていた。
外から見たのと比べれば中は広く見える。
お店の中には年代物と思われるテーブルが置かれていて、それを装飾するように数々の雑貨が並んでいた。
歩いてきた街の景色と同様にこのお店にもクリスマスにちなんだ雑貨が置かれていた。
『もうすぐクリスマスか。』
聖夜と呼ばれるその日あたしは誰を求めるのだろうか。
『あっ。彩夏さん。見てください。』
そう言って彼女はあたしを呼ぶ。彼女はこのお店に来たがっていた。だからあたしは探していたものが見つかったんだと思いついていく。リース?ツリー?彼女が見つけたものはあたしの考えていたものとは違ったみたい。
『あたし、これを探していたんです』
彼女の指差したものはクリスマスキャンドルだった。
綺麗なガラスの器の中で赤い炎がひっそりと揺らめく。暖かな感触。眩しいと言うよりは心地よい位までの柔らかな光。炎が揺らめくたびにあたしの過去と未来が見えるような気がした。
『彩夏さん。彩夏さんの目にこの光が映っていて、本当に目が輝いているみたいだね。』
あたしは涼子ちゃんの瞳を見ていた。彼女もあたしの瞳を見ていた。二人の瞳の中で同じ炎が揺らめいていた。
『あたしこれ買ってきますね。』
そう言ってレジに迎う涼子ちゃんの背中をあたしは見ていた。
程なくして涼子ちゃんは可愛らしい包装に包まれた袋を片手に歩いてきた。
『彩夏さん。実はもう一つ行きたい場所があるの。』
『あたしは大丈夫だよ。どこに行きたいの?』
『夏のお祭りで花火を見たところ覚えている?またあそこに行きたいの』
もともと断る理由なんてない。あたしももっと一緒にいたいと思っていた。だから頷くのは簡単だった。『行こう。あの日のあの場所へ』
その時とは決して同じではない。変わってしまった物もあるけれど、あたしはそれを乗り越えられる。だからあそこで涼子ちゃんに告白しよう。そう思えたことは不思議なことではなかった。
階段を上がる。あたしは彼女の背中を追う。
冬の日の入りは早い。時刻を告げる針が夕刻を知らせるときには日はほとんど沈んでいて一番星が顔をのぞかしていた。
階段は半ば以上上ると道が広がる。前を歩いていた涼子ちゃんはそこの広い舞台でダンスを踊るようにあたしの手をとったままターンをする。