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刃に心
【コメディ 恋愛小説】

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刃に心《第9話・紅き月夜》-6

(来るッ!)

疾風も殺気を研ぎ澄まし、その一瞬に備える。

───シュッ!

だが、化け猫は疾風とは違う方向へ跳んだ。
見れば化け猫がいた場所に奇妙な白い紙が張り付いている。

「もう逃がさねぇ!」

教室内に二人の乱入者。
若い男女のようだ。
その内の男が日本刀を構え、女は指先に薄い紙を挟んでいるのが仄かな月明りの中でも見て取れる。

───グルルル…

化け猫が唸り、跳躍。
白い紙を握る女に向かい、爪を掲げた。

───キィン…

澄んだ金属音を響かせ、爪が折れる。否、瞬時に女と化け猫の間に割って入った男によって断ち切られた。
男の鋼のような黒髪が揺れる。

「はっ!」

女が紙を放つ。化け猫の胸に張り付いた瞬間に動きが止まった。

───ザン…

続けて一閃。銀の筋が闇夜にきらめく。

───ぎぃにゃあああ…

断末魔の悲鳴を上げて、化け猫が倒れる。
その姿が少しずつ小さくなり、やがて塵のように消滅した。辺りには血の姿も臭いもない。

「ふぅ…」

女がほっと息を吐いた。
背が高く、髪は短め。服装は男物で男装の麗人とも言うべきか。

「アンタら…何者だ?アレは何なんだ?」

疾風が言った。化け猫が消えた後も苦無は真っ直ぐに乱入者達を威嚇している。

「そんなに警戒しなくてもいいぜ。オレ達はお前らに危害を加えるつもりなんかねぇから。なぁ?」
「ああ」

苦笑しながらの女の言葉に男は短く返した。

「見たところお前も普通じゃなさそうだから言うけど…オレ達は陰陽師。で、アレは呪いが使役者の手に負えなくなったモノって言えばいいのかな…まあ、ヒトに惑わせて食らう化け猫って考えてくれれば十分だ。
それで、オレは蘆屋マコト。こっちが…」
「くじょ…ッ!?」

その瞬間、男の足が勢い良く踏み付けられた。


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