【魔術師】の戦いと受難 いち 〈上〉-1
我は夢見る。我が存在が消えることを。次の我が現れることを。それを夢見て未来永劫過去永遠の孤独と闇の中、瞼を閉じ瞳を曇らし夢へと意識を沈ませる。自らの夢が叶うことを夢見て。
「こぉんのっ、バッッカァぅあぎぃとぉ〜!!。また美袋先生に呼ばれてるの忘れたでしょ〜!!」
ゴッ!ベギィッッ!!
放課後、もう何人もいない教室でボーッ、としていた俺こと愛流顎【あいる あぎと】の後頭部にヘビー級ボクサーの右ストレート並のチョプがに炸裂した。
さっきの擬音は俺の幼馴染みでお隣りさんでもある【ひびき しずく】が殴り俺の額が机にあたった音だ。あぁ〜ぁ、机にヒビがはいっちまった。さらに教室に残っていたヤツラの視線も総なめだ。ちなみに漢字で書くと【響雫】だ。たった二文字で済む。どうせ後から説明するんだし面倒だから俺と雫の事に付いて説明する。
まず俺、主人公だ。・・・と思う。取り立てて説明することが無いほど平凡だ。容姿はそれなりに整っていてショートの黒髪を軽く後ろに流してる。目元はキリッとしていて瞳は黒。体格は、華奢だがガリって訳じゃぁ無い。何て言うか女みたいな感じだ。静海高校【普通科】二年特進クラスだ成績は自分で言うのはなんだが優秀だ性格は、普通、たまにブッ飛ぶらしい。俺については以上。
次は雫だな静海高校【魔術科】二年クラスCだ暴力大好きな幼馴染みでお隣さん。顔は整っていてスタイルもいい。少し茶色がかった髪は肩までのセミロングにして後ろ髪だけをリボンで結んでいる。これで性格が良ければ言うこと無いんだがなぁ。
ヒュッ!!ドガッッ!!!「いってぇ〜なぁ。雫、なんで殴るんだよ!」
いきなり殴ってきた雫を見ると。
「あんた今、失礼なこと考えたでしょ(ニッコリ)」
鬼だ、鬼がいる。
「気のせいだ。きっと・・・いや、絶対気のせいな。心の片隅にも思っていねぇ!。たから気のせいだ。」
正直こいつの【魔法】は痛い。できれば食らいたくない。あぁ、この世界には【魔法】っていうシロモノがある。【魔法】ってのはその存在に宿る【魔力】って言うの使って世界の法則螺子曲げて奇跡の様なことを起こすことだ。この【魔力】自体は誰でも持っているんだか誰でも【魔法】を使えるわけじゃぁないんだ。【魔力】を扱うには才能が必要らしい、その才能を極めたヤツのことを【魔術師】とか【魔法使い】とか言われているんだ。この国には【魔術師】を育てる為の機関がいくつかある。静海(しずみ)高校もその一つだ。そこの【魔術科】に通っている雫はいわば【魔術師】の卵って訳だ。
「ところで何で【魔法科】のおまえが【普通科】のここに居るんだ?」
【魔法科】と【普通科】では校舎自体がちがうから普通は【魔法科】の生徒がこっちの校舎にくる事なんてほとんど無いはずだ。
「わたし【魔法科】の生徒、美袋先生【魔法科】の先生だからよ、わかる?」
と、しごく普通の様に言いはなった。
「わかる?・・・って、とか言ってホントは俺に会いたかったんじゃねぇのかぁ?」
そうふざける俺に雫は。
「ばっ、バッカじゃないの!?なんでわたしがあんたなんかに会いたがらないといけないのよ!〜〜〜〜ぅっ!!まっ、まぁいいわ、美袋先生が呼んでいたわよ。」
赤鬼になって言った。
ガッッ!!
また殴られた。
「また失礼なことを考えたでしょう。」
こいつ、人の心を読めるのか?
「いってぇなぁ。でもまぁ美袋さんかぁ、あの人会うたびに俺に【魔術科】に転入しろってうるさいんだよなぁ」
そう俺には【魔術師】としての才能がある。ガキのころから誰に教わるでもなく【魔力】を制御することができた。ある事情があって今じゃあほとんど使わなくなったんだが。
「それだけアンタには才能があるってことなんでしょ・・・・・・それに・・・一緒にいれるし。」
そう言って雫は紅くなった。
「それに・・何だって?悪い聞こえなかった。まぁ、良いっか。まっ美袋さんのところに行かない訳にはいかないし。あぁ〜っ、うっしまぁ行ってくるかっ!」紅くなった雫はいつの間にか絶対零度のオーラ纏っていた。
「・・・ア・ドゥルエ・ガ・アイシクル」