想いの行方U-9
「他の女のはもらっても食わねーよ」
「……」
「あのなァ、俺だってお前人気あっから不安なんだよ」
「………もう嫌」
私の言葉に矢田は少し険しい顔をした。だから慌てて鞄に手をのばした。
「こんなの作っちゃうし」
鞄から取り出したのは麻衣に手伝ってもらって作ったガトーショコラ。
それを見て矢田は拍子抜けな顔をしている。
「え、これ…誰に?」
矢田の何とも間抜けな質問に私は呆れてしまった。
「あんたに!」
「……ははっ…あはははは!」
「何よー」
「こんなの作っちゃったんだ?」
「悪い?」
きっと私の顔は真っ赤。
矢田はそれをケラケラと面白そうに笑った。でもその後、口元に手を当てながら「やっべ〜愛感じた」と少し頬を赤らめて言った。
「お前、俺のこと好きだろ?!」
「……うるさいなぁ」
「ははっ、かーわいいの」
私たちは夕日に照らされながらキスをした。
矢田はこんな私がいいみたいだし、もう悩む必要はないかな…なんて思った。
保健室を出るとき、前を歩いていた矢田が急に振り向く。
「やっぱ好きだろ?」
「はぁ?」
思わずそう答えると矢田は突然ドアを閉めた。
「ちょっと!開けてよ」
「今日はバレンタインだろーが」
ドアの向こうで矢田はからかうように言う。
本当に意地悪。