想いの行方U-2
「…あ」
メッセージカード付きの小さな可愛い箱。
『Happy Birthday Kokoro!』
箱の中にはきらりと小さな光りを放つミッシェルクランの指輪。
「……ぷっ、キザすぎ」
思わず吹き出してしまったけど、嬉しくて口元がにやけてしまってしょうがなかった。
今日は私の誕生日。
矢田は一緒に祝ってくれるつもりだったみたいだけど、残念ながらそれは中止。
留学中の姉がわざわざアメリカから帰って来てくれたからだ。
散々文句を言っていたけど、久しぶりの姉妹の再会に水をさせないと断念したようだった。
やっぱり納得いかない顔をしていたけど。
学ランから矢田の香水の匂いがして少しドキドキしてしまった。広げてみると意外なほどに大きくて、男なんだなっと思った。
「心ぉー!どぉしよー!!」
教室に入ると麻衣が机の上でうなだれていた。
その理由は開いている雑誌のページを見て納得した。
「渡したらいいじゃん、バレンタイン」
「そうなんだけど〜」
麻衣の話によると、相変わらず矢田は人気があるとはいえ私がいる。
それにより、本気で狙っていた子たちの大半の目は別の方へ向けられた。
いつも矢田の傍らにいる人物………そう、速水だ。
去年よりも競争率が倍になったと麻衣が嘆いているわけである。