ココロ、何となく想い-6
「瀬里奈…ずっと一緒に居てよ……」
…………
「ほら、相原君そろそろ起きたら?」
揺り起こされる心地好さと、耳元で囁かれる安心感。
「瀬里奈…?」
目がまだ虚ろで、顔が分からない。
瀬里奈……?
「あら、私じゃいけないのかしら?」
そう言って、意地悪そうに微笑む。
「え…いやっ…」
未だ働かない頭で、一応否定をする。
そこに居たのは、高山先生だった。
瀬里奈は………居ないのか。
「ねぇ…聞いていいかしら?」
「はい?」
身の回りを整理しながら、高山先生は言った。
「瀬里奈…って、誰かしら?」
………誰…って?
「中原瀬里奈って、知らないんですか…?」
どういう事だ?からかっているのか?
だが、そんな疑いはすぐに掻き消された。
「私は知らないわよ?」
そう言って彼女が手にした女性向け雑誌。
部屋に入る前、先生が読んでいたやつ…。
そして、この風景………。
「いや…何でもないっす。」
雑誌の裏表紙…そこに瀬里奈は居た。
『早く治してね!』
という台詞の下で、ナース服で薬を差し出し微笑む彼女…
「んだよ、夢…かよ。」
あまりにもリアル過ぎて……痛い夢だ。
俺は慌てて、ソコを押さえてトイレへと向かった。
「はぁ…」
ピロロロロッ…ピロロロロッ…♪
ポケットに入れた携帯が着信を告げる。
トイレで良かった。先生にバレたら、没収だ。
「はい、俺。」
『あっ、遡也ぁ?今から渋谷来れるっ?』
「あぁ…いいよ。」
『嬉し♪じゃあ、5時にいつものとこでね!ばいばぁい』
5時か…あと1時間もない。
「…出るか。」
俺はトイレから出て、保健室の高山先生にお礼を言うと、急いで下駄箱へと向かった………―――。
●End●