痛みキャンディ6-2
ガブっ。
痛みを感じた。
それは心ではなくおれの腕に。
瞳を開けてみると
クゥがおれに噛み付いていた。
こいつはわかってるんだ。
逃げちゃだめだって。
痛みは次第に感じなくなった。
クゥ…
おれは必死に何かを伝えようとしているこの子犬を抱きしめ顔を上げた。
ここで逃げ出したら何もわからない。
行かなきゃ。
おれは支度を始めた。
きっとこれが最後の旅になるから。
あの景色をおれはみることができるのだろうか?
そして今のおれに何ができる?
不安を殺しながらクゥに餌をあげておれはアパートを後にした。
あの人の待つ場所を行く。
その先に何が待っているかはわからない。
だけどそれが今できる全てだから。