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アッチでコッチでどっちのめぐみクン
【ファンタジー 官能小説】

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アッチでコッチでどっちのめぐみクン-63

「シープ様ぁ〜」
 自分を呼ぶ声が遠くから聞こえてきて、シープが声の方向を振り向く。そこにはメイドの少女が声を枯らしてシープの名前を呼び続けている姿があった。

「私ならここよ! どうしたの!?」
 シープがメイドに向かって大きな声をあげる。
「あっ! シープ様」
 ようやくシープに気づいたメイドの少女が、慌てて駆け寄ってくる。その途中で、一緒にいる人物がフローレンスだということに気づいて、フローレンスにも頭を下げる。
「あっ、フローレンス様、おはようございます」
「おはよう」
「用件は何?」
「はい。それがその……ディグ・フレイア様とルーシー・フレイア様がアリーランドに戻られて、これから王様と謁見なさるので、その準備をするようにと……」
「あぁ、そう。わかったわ」
「あのぅ、シープ様……」
 伝言を聞いて、早速行動しようとしたシープを、メイドの少女がおずおずと引き留める。

「……何よ?」
「……ディグ様とルーシー様って、やっぱりあのディグ様とルーシー様なんですか!?」
 メイドの少女が目を輝かせてそうシープに尋ねてくる。
 シープは、城内でもほとんどの人間が、二人が戻ってきていることを知らないでいたことを思い出す。
「そうよ。昨日のうちにアリーランドへ戻ってきてたらしいわ」
「ホントにホントなんですか!? あ、あの……握手とかサインとか記念撮影とか、頼めばしてもらえるんでしょうか?」
 本当にディグ達が戻ってきていると聞いて、メイドの少女はさらに興奮した面持ちで尋ねてくる。
「……知らないわよ。機会があったら頼んでみれば?」
 それに対してシープはやや冷めた口調でそう答えた。
「そ、そうですね! そうします! それでは私も仕事があるので戻りますっ」
 それだけ言うと、興奮冷めやらぬメイドの少女は大急ぎで自分の仕事へと戻っていった。

「……さてと、あの二人が戻ってきたとなると、いよいよ一騒動起こりそうね」
「……そうですね」
 シープは大きく伸びをして、すでに王が行ってるはずの謁見の間へと向かった。
 手を振ってそれを見送るフローレンスが、いまだ王に対する疑念を払拭できていないことに、この時、シープは気づいていなかった……


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