アッチでコッチでどっちのめぐみクン-61
「……根性無いわねぇ……あら?」
シープが、自分達のいる場所の少し先にある十字路になっている曲がり角の横側の通路から、複数の人間がぞろぞろと現れてはシープ達のいる方向とは反対側に向きを変えて歩いていってることに気づく。
「え? ……あっ!?」
フローレンスがちょうど振り返った時に、その一団の中心を歩く人物が現れた。
「……アーリストン王……」
それは、いつも以上に派手な格好をした、アーリストン王であった。その周囲には若い兵士が多数付いて歩いているのだが、今回ロキシーの姿は見えない。
「……謁見の間に向かってるみたいですね。来賓でもあったのでしょうか?」
「そんな感じね……もしかしたら、ディグ達が城に戻ってきたのかも……」
「……」
「……どうしたのよ?」
突然黙り込んだフローレンスの様子に、シープが眉をひそめる。
「……いえ、昨晩、城内を散歩されていた王と少しだけ会話したのですが、以前とは別人のようだったんです……」
「あぁ、そういうこと。私も昨晩会ったけど、あれはもう別人だったわね。倒れる以前とは言うことまで違ってたわよ。まるで……」
「……まるで……何ですか?」
「あなたの父親そのまんまの話し方だったわよ」
「……お父様?」
予期せぬ指摘を受けて、フローレンスが一瞬きょとんとする。
「……あなたはそう思わなかった?」
「……お父様とはまた違ったような……」
「そう? まぁ、あなたに対する話し方と私や他の人に対する話し方が全然違う人だったから、あなたにはピンとこないかもね……でも、生前の将軍みたいなことまで言ってなかった?」
「……そ、それは……そう言えば、どことなく……以前まで頑なに否定していた、お父様の意見に理解を示していたり……」
フローレンスは、昨晩の王との会話を思い出して、なんともいえない不安な気持ちになってくる。
「でしょ? まるで、将軍の魂が王に乗り移ってるみたいだったわよ」
「……魂が乗り移る……!!」
その時、フローレンスの頭の中には、昔読んだ本に書かれていた古代術法に関する記述が思い出されていた。
第17話 おわり