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アッチでコッチでどっちのめぐみクン
【ファンタジー 官能小説】

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アッチでコッチでどっちのめぐみクン-57

……………

「な、なんか、すごいことになってない?」
 葵が口元を引きつらせながら、めぐみに話しかける。
「う、うん、ボクもそんな気がする……」
 めぐみの腕の先には直径1メートルはあろうかという巨大な火の球が出現していた。もちろん、めぐみ自身が習ったばかりの術を使って出したものだ。

「こ、これ、どうしたらいいんだろ……」
「さ、さぁ、と、とにかく危ないから、窓の外、あ、そうだ、この下は確か堀になってたわ。そこに捨てましょ」
「う、うん。そうだね」
 めぐみがゆっくりと窓際に向かって移動する。
「さ、早くここから!」
 葵は急いで大きな窓を全開にすると、めぐみを手招きする。
「わ、わかった」
 めぐみが火の球を手の先に浮かせたまま、窓から腕を火の球ごと外に出す。
 そして腕を下に向け、堀に向けて火の球を押し込むように放り捨てる。直径1メートルほどの火の球は、ドボンと勢いよく水しぶきをあげて着水した。

「はぁ〜っ、あんなに大きくなるなんてねぇ」
 葵は火の球が堀に沈んで消えていくのを見届けると、大きくため息を漏らした。
「うん……どのくらい大きくできるか、なんて試さなければよかったね……」
「でも格段の進歩よね。初めて火の球出せてからまだ二時間ぐらいなのに、あんなに大きくできたんだもん……まぁ普通はどれぐらいかかるとか知ってるわけじゃないんだけど。でも、やっぱり、めぐみクンは両親の才能を受け継いでいるのよ。英雄の息子にも英雄の素質ありってことね」
「……ボク、別に英雄でなくてもいいんだけど……ただ、強く、というか、男らしくなりたいだけで……」
「あたしを守りたいから?」
「そうじゃなくて……いや、その……」
 慌てるめぐみを面白そうに見ていた葵が、自分がした質問に自分で答える。
「わかってるって。自分自身くらい自分で守れなきゃ、とか思ったんでしょ? あの馬鹿女とのことで」
「う、うん……」
「でも、あたしを守ってあげようとかは思わないの?」
 葵が再び意地悪な顔をして、めぐみに質問してくる。
「……そんなことないよ。ボクの手で守ってあげれればいいな……って……思うけど……」
「ホント? じゃあ、期待しちゃおうかなぁ。もし本当にそうなったら、めぐみクンはあたしの王子様ってことになるのかな?」
「……王子様?」
「そう。童話に出てくるようなのね。ここの王子様みたいなのじゃなくて……あたし、お姫様のいかなるピンチにも颯爽と駆けつけて助けてくれる王子様って絵に憧れてたのよねぇ〜」
 葵がわざとらしく両手を胸の前で合わせながら天井に視線を向ける。

「……ボクには難しいんじゃないかな……」
 真面目に答えるめぐみに向かって、葵がにこにこしながら手を顔の前で横に振る。
「いいのいいの。その辺はあたしの頭の中で思いっきり修正しとくから」
「……ちょっとヒドイ……」
「冗談だってば。ちょっとからかってみただけよ」
「……わかってるから、ヒドイって思ったんだけど……」
「あ、そうなんだ。あははははっ、ごめんねぇ」
 そう言う口先とは裏腹に、葵は楽しそうに笑いだした。

 ……………

 その頃、ディグとルーシーは城下町に入るのを避けて、城の近くまで広がっている草原に足を踏み入れていた。

「やっと、戻ってきたな……」
「……えぇ」
 ディグとルーシーは、視界の先に見えてきた巨大な城を前にして気合いを入れ直すと、再び草むらをかき分け、城へと向かって歩き出した。
第16話 おわり


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