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アッチでコッチでどっちのめぐみクン
【ファンタジー 官能小説】

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アッチでコッチでどっちのめぐみクン-56

「ところで、シープを見なかったかしら?」
 会話の内容がだんだん重苦しくなっているのを感じて、フローレンスは本来聞こうと思っていたことに話題を変える。
「え? ……シープ……ですか?」
 ロキシーの顔にあからさまな嫌悪感が現れる。
「えぇ、この辺にいるって聞いてきたんだけど……」
「私は見かけませんでしたよ」
「そう……」
「……あの……」
 ロキシーが、少し迷ってから覚悟を決めて、おずおずとフローレンスに話しかける。
「何?」
「シープをこの城のメイドに推薦したのは、フローレンス様なんですよね?」
「ええ、そうよ。彼女はもともとうちで働いていたのを、彼女の希望もあって、私がここで働けるよう取り計らったのよ」
「……あまり、シープを信用しない方がいいんじゃないでしょうか?」
「……どういうこと?」
 ぴくりとフローレンスの眉が少し吊り上がる。しかしロキシーはそれに気づかずに話を続けてしまう。
「あの子、きっと何か企んでますよ。もしものことがあったら、彼女を推薦したフローレンス様にも迷惑が……」
「あなたに、シープの何がわかるの!?」
 フローレンスが怒りをあらわにしてロキシーに向かって詰め寄る。その迫力にロキシーは思わずじりじりと後ずさりしていった。

「で、でも、シープは昨日の夜だって王様から……」
「王様から? ……何?」
「信用ならないって、い、言われて……その……」
 初めて見るフローレンスの怒りの表情に、ロキシーはしどろもどろになってくる。
「だから何よ! あなたも、王様も、それにお父様も、彼女のことを何もわかっていないんだわ! 今の私は、彼女のおかげで存在してるようなものなのよ! 誰であろうと彼女のことを悪く言ってほしくないわ!」
「あ、あの、ご、ごめんなさぁい」
 普段控えめなフローレンスの思わぬ激昂に、ロキシーが涙目になって謝る。その様子を見て怒りすぎたと感じたフローレンスは昂ぶりを鎮めるために大きく息を吐いた。
「……わかってくれればいいのよ。でも、二度とシープのことを悪く言わないで」
「……は、はぁい……」
 ロキシーが涙目のまま、うなだれる。
 フローレンスは少し気まずく感じて、すぐさまロキシーに背を向けて、再びシープを捜しに向かった。


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