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アッチでコッチでどっちのめぐみクン
【ファンタジー 官能小説】

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アッチでコッチでどっちのめぐみクン-49

再び練習を始めるめぐみをよそに、シープが小声で葵に話しかける。
「……私、いつまでつき合わされるの?」
「うるさいわね。あんたしか、この本読める人いないんだから、もうちょっとつき合いなさいよ」
「火球の術の使い方なら、もう全部教えたじゃない」
「他の術も試してみたくなるかもしれないじゃない」
「この火球の術は、数ある術法の中でも最も簡単な術なのよ。これが駄目ならどれを試しても一緒よ」
「あぁ、それでこの術を選んだんだ。めぐみクンが強くなりたいって言ってたから、それで攻撃用の術を選んだのかと思ってた」
「術士になろうとする者は、まずは必ずこの術から始めるのよ。この火球の術は、術者の持つ能力に比例して威力を大きくすることができるから、才能があるかないかの判断もしやすいのよ」
「じゃあ、めぐみクンに才能は無いってこと?」
「……もう三時間近く練習して駄目なんだから無いんじゃないの? こうまで出せないんじゃねぇ」
「でも、めぐみクンの両親はすごい術者なんでしょ。めぐみクンに才能が受け継がれている可能性は充分にあるはずでしょ」
「どうだかねぇ……たとえ才能があったとしても、磨いていなきゃ錆ついて使い物にならなくなるんじゃない?」
 葵とシープがそんな話をしている間も、めぐみは練習を続いていた。そして……

「葵ちゃん! 葵ちゃん!」
 めぐみが突然大声を出して葵を呼ぶ。
「な、何!?」
 葵は慌ててめぐみの方を振り返る。
「ちょっと見てて」
 めぐみは、少し嬉しそうにそう言うと、
「えいっ!!」
というかけ声とともに、腕を前方に伸ばす。
 すると、めぐみの手のひらから、ちろっと小さな火が現れたが、ほんの一瞬だけで消えた。
「あっ!? ……めぐみクン、すごいじゃない!」
 葵が驚きの声をあげる一方で、シープは覚めた目で見つめていた。
「……そんなちっこい炎、何の役に立つのよ……」
 シープがぼそっとつぶやいたのを聞いていたのかいないのか、めぐみが葵に明るく話しかける。
「もっと練習すれば、もっと大きな火を出せるかなぁ」
「うん、きっと出せるようになるわよ。頑張って!」
「うん!」

 盛り上がる二人を横目に見て、シープは大きくあくびをしながら声をかける。
「……ま、頑張ってよ……」
「うん、大きな火を出せるようになったら、違う術にも挑戦してみたいから、その時は翻訳よろしく頼むね」
「……とりあえず、それまではしばらく私の出番はないんでしょ。私はひとまず本来の仕事に戻らせてもらうわ。それじゃあ、術法の勉強頑張ってねぇ」
 シープがやれやれといった様子で部屋を出ていく。

 シープが部屋から出ていった直後、葵があっ、と短い叫び声をあげた。
「どうしたの?」
「え? あ、そうか。学校にはあの人達が代わりに行ってるんだっけ……」
「あっ、そういえばもう授業がとっくに始まっている時間なんだ……あの人達、うまくやってくれてるかな?」
 めぐみは腕時計を見ながらつぶやいた。


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