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アッチでコッチでどっちのめぐみクン
【ファンタジー 官能小説】

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アッチでコッチでどっちのめぐみクン-48

第14話 『術士の息吹』


「俺はもう駄目だ……もうこれ以上歩けん」
 サイファは、そう言って荒野の真ん中でへたりこんだ。

「お前なぁ……まだ歩き出して一時間ちょっとしか経ってないだろうが」
 ディグが、呆れたような目でサイファを見る。
「そんなこと言われても、今日は起きてからずっと背中がズキズキ痛むんだよ」
「ほ、ほぉ? 何でだろうな?」
 ディグには原因に心当たりがあったがとぼける。
「……サイファ、あとちょっと歩けばユーゲン村にたどりつくから、そこまで頑張ってくれない?」
 今度はルーシーが、サイファに向かって話しかける。
「……ユーゲン村?」
「そう。もうその村の近くまで来てるはずよ。村の中ならモンスターもいなくて安全だから、あなたはしばらくそこに逗留してればいいわ。そこから先は私達だけで行くわ」
 そう言ってルーシーが地平線の先を指さす。
 サイファは目を細めて、村があるという方向を見つめるが、まだ少し距離があるのか全然見えない。
「……本当に近いのか? 全然見えねぇけど……」
「大丈夫。本当にあと少しだから。昨日通ったばかりだからちゃんと場所は覚えてるわ」
 ルーシーが自信満々に答える。
 ……こんなろくに目印もない所でよくわかるな……
 その一方で、ディグはきょろきょろと辺りを見回していた。

 ……………

「それで?」
「それから、腕を目標に向けて伸ばして、手のひらに感じた空気の熱の流れを前方に押し出す、だって」
 シープが、めぐみの催促に応えて、赤い本に書かれたある一文を読んでやる。
「よ、よくわからないけど……こう?」
 めぐみは言われた通りに手を思いきり前方に伸ばす。しかし別段何も起こらない。
「……違うんじゃない? 何も出てないわよ……ま、才能が無いだけかもしれないけど……」
 シープがいい加減めんどくさそうに答える。

 めぐみはなんとか術法を使えないものかと練習に練習を重ねていた。
 シープにめぐみ達の知らない文字で書かれた術法の入門書を読んでもらい、その通りにめぐみがやってみる、ということをもう二、三時間は続けている。
 最初の頃は、葵ももしかしたら、などと考えて試してみたりしていたものの、数分やってみただけですでに諦めてめぐみの練習の見物に回っていた。
 めぐみの方は粘り強く続けているのだが、こちらも今のところ全く術を使えず、つきあわされているシープもかなりだれてきている。

「……だいたいね、術法なんて使えない方が普通なんだから、これだけ練習して駄目ってことは、そもそも使える見込みは無いってことなんじゃないの?」
 シープがめぐみを諦めさせようと言葉をかける。
「……でも、ボク、強くなりたいんだ……」
 めぐみが少しうつむき加減に答える。
「……だったら剣の練習でもすれば? 鍛えれば少しぐらいの成果は確実にあるわよ。術法は努力しても使えない人は全く使えないんだから……」
「……」
「私の知ってる子にも、術士に憧れて術法の勉強をしたけど、どうにもならなかったんで剣術の方に移ったってのがいるんだけど、今じゃ王様の警護を任されるほどの実力者になってるわよ」
「それはすごいわねぇ……」
 ベッドに座って見物している葵が感心してつぶやく。
「でしょ。そいつすごい単純な性格してるんだけど、この場合それが幸いしたのね。まだ若くて実戦経験こそ全然無いけど、練習試合じゃ、最強の実力と呼び声高いマイルホーク将軍にも勝ったことあるらしいわ」
「ふぅん……相当すごい人らしいわねぇ」
「……ま、最高の術士と最高の剣士が一対一で戦ったら、絶対術士の方が勝つだろうけど……とにかく、強くなる方法は術を使えるようになる以外にもあるってことよ」
「……うん、そうだね……お父さん達が使えるらしいからボクも使えるんじゃないかと思ってやってみたけど……全然駄目だもんね……もう少しやってみて駄目だったら術を使うのは諦めるよ」
「……もう少しやってみるの? ……あ、そぉ……」
「えっ、と……まず、空気の流れを手のひらで感じとる。次に……」


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