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アッチでコッチでどっちのめぐみクン
【ファンタジー 官能小説】

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アッチでコッチでどっちのめぐみクン-46

……………

「ん……うぅん……?」
 葵とめぐみのタッグ攻撃に気絶させられてしまったシープが意識を取り戻した時、彼女はベッドの上に寝転がっていた。
 うっすらと開かれた目にベッドに取り付けられた天蓋と自分を上から覗きこんでる二人の人影が映る。
 その目が人影にピントを合わせた瞬間、シープは勢いよく跳ね起きた。

「ようやく起きた? もうすぐ朝になるわよ」
 ベッドの上に座り、身体をねじってシープの方を見ている葵が、ふふん、と口の端で笑いながら話しかける。
「……ここ、どこよ?」
 シープは、甦ってきた記憶に悔しさを噛み殺しながら尋ねる。
「ボク達が使ってる部屋だよ。階段の上には昇ってきてるけど」
 ベッド横に立っていためぐみが、ベッドに両手をついてシープに答える。
 当然ではあるが、葵もめぐみもすでに服を着てしまっていた。

「……あたしは窓から下の堀に向かって投げ捨てたかったんだけどね……めぐみクンがあんたに用があるって言うから」
 葵が少し不満そうなポーズを作りながらそう言った。
「用? 用ってなによ?」
 シープは数時間前の敗北がこたえたのか少し脅えながら聞き返す。
「うん、ちょっとこの本を読んでもらいたくて……」
 めぐみがベッドの上に置いてあった本を、シープの目の前へと差し出す。
「なんで、私があなた達に本なんか読んであげなくちゃいけないのよ」
「……言うこと聞かないんなら、また二人で可愛がってあげましょうか? あたしもめぐみクンも、もう体の調子は戻ってるから、さっきよりも簡単に勝てるわよ」
「ぐっ……な、何よ、何の本よっ」
 葵が低い声で威嚇すると、シープは悔しさに歯噛みしながら、本を持って立っているめぐみの方に目を向ける。
「何の本かボクらにはよくわからないんだけど……ここの人なら読めるだろうと思って……」
 それはめぐみと葵がここに来てから、ずっと勘任せの翻訳作業を続けていた、あの本であった。
 シープが戸惑いながらも表紙の文字を睨みつける。

「? 『術士全代』? 何よ、歴史書じゃない」
 シープは本の表紙に書かれている文字を読んで、こんな本読ませてどうするの? と問いたげな顔をする。
「歴史書? これって歴史書なの?」
 めぐみが『術士全代』と書かれているらしい表紙の文字を改めて眺める。
「そうよ。礎となった古代術士達や近代の高名な術士達などが、歴史の上に残してきた足跡をくまなく記した本よ」
「読んだことあるの?」
「あるわよ。私は読書家だもの……結構有名な本なんだけど、著者が誰かわからなかったり、かなり嘘くさいことも書かれてたりで、実際にはおとぎ話の本のように扱われてるわね」
 シープがどことなく自慢気に『術士全代』という本の解説をし始めた。
「例えば?」
「そうねぇ……二人の術士が、海しかない世界に大地の素となる土の塊を置いていき、その上に生命の種を蒔いて出来たのがこの世界だ、とか……そこまでくるとさすがに信じられない話でしょ?」
「……まぁ、そうね。なんか似たりよったりな話を聞いたことがあるような気もするけど……でも少しはホントのことも書かれてるんでしょ?」
 今度は葵がシープに尋ねる。
「歴史学者の研究によると、近代術士の足跡については事実関係に忠実に書かれてるらしいわ。古代術士の部分についてはそれぞれについて諸説あるわね」
「やっぱり嘘っぽいの?」
「それが微妙なのよね。完全に嘘だと判明している話もあれば、事実であることを裏付ける発見が成されている話もあるし、嘘か本当か全く判断のつかない話もあるしで」
「ようするに必ずしも真実のことが書かれている、というわけではないのね」
「そういうこと。ただ、フビラ王が禁止したとかいう古代術法の話は本当だったのかもしれないわね。実際に古代術法が存在しているところをみると」


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