アッチでコッチでどっちのめぐみクン-45
……数時間後……
「……もうすぐ夜が明けるな……」
地平線の彼方に顔を覗かせ始めた太陽を見ながら、ディグはつぶやいた。
「……そうね。そろそろ出発しましょうか?」
同じように太陽の方を見ていたルーシーがゆっくりと立ち上がる。
「……しかし、よく寝てやがるぜ。こいつ」
ディグが後方を振り返る。
そこには、大きないびきをかいて寝ているサイファの姿があった。
「仕方がないわよ。十六年間もずっと閉じ込められてて、やっと出られたと思ったら長距離を歩いて移動ですもの。相当疲れてるはずよ」
「……そうだな。めぐみのことが心配でかなり急いでたしな。今のこいつには相当つらかっただろうな」
ディグが少し申し訳なさそうにサイファの寝顔を見つめる。
「……だが、めぐみが馬鹿王子のもとにいる以上、のんびりしてるわけにもいかんのだ。こいつにも、なんとか急いでもらわないと」
「そうよね。こんなとこに置き去りにするわけにもいかないし。遅れずについてきてもらわないとね……」
「よし、それじゃ、そろそろ起こすか。王子やジョーカルが何を企んでようと、めぐみに危害を加えさせるわけにはいかん。できるだけ早く駆けつけて取り戻さないと」
そう言ってディグがサイファの方へと歩み寄ると、寝ているサイファの頭をパチンと叩く。
「おい! 起きろ、サイファ! そろそろ出発するぞ!」
「……む……う〜ん……」
しかし、サイファは寝返りをうって、ディグに背を向ける。
「……しようがないな。サイファ、起きろ! おいっ!」
ディグが少し強めにサイファの体を揺さぶって、起こそうとする。
「? ……やめろよぉ……」
サイファが自分の体にかけられたディグの手を、寝ぼけながら振り払おうとする。
「サイファ! いい加減に目を覚ませ!」
ディグはさらに力を入れてサイファの体を揺さぶる。
「だめだよ、ルーシー……こんなこと、ディグにばれたらやばいだろぉ……」
「!?」
サイファの寝言に、ディグの目は吊り上がり、ルーシーは半分呆れた顔になる。
「いったい、お前はなんの夢を見とるんだぁぁぁっ!!」
次の瞬間、ドカァッという鈍い音とともに、サイファの体はディグに蹴られた勢いで数十センチほど浮き上がっていた。