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アッチでコッチでどっちのめぐみクン
【ファンタジー 官能小説】

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アッチでコッチでどっちのめぐみクン-24

シープの話を聞いている葵の眉間にしわが寄ってくる。
「……もしかして」
「何が?」
「今日、めぐみクンの両親もここの王子に呼ばれてこの国へ来たらしいのよ」
「めぐみクンって、この娘のこと?」
 シープがめぐみの方に視線を向ける。
「そう」
 葵が即座に返答すると、シープが顔を上に向けて記憶をたどる。
「……そういえば、朝、ジョーカルに連れられて変わった服装の熟年カップルが城内に入ってきてたわね。バーグ三兄弟やロキシーに周りを取り囲まれててよく見えなかったけど……あの三兄弟はでかすぎるわよ。あれがこの娘の両親だったんだ……」
「……バーグ三兄弟? ロキシー?」
「王族の警護についたりしてる、一応精鋭ってやつらよ。とにかく強い、っていう連中よ。ま、頭の中身の方はどいつもこいつもって感じだけど」
「それで、その二人はその後どうしたの?」
「会議とかに使う部屋に案内されてたわ。もっともすぐに城を出て行ったけど。ただ、出ていく時にもバーグ三兄弟やロキシーが城門の外まで取り囲んだままついていってたのは妙だったわね。まるで二人の姿を隠すように歩いてたわ」
「……その二人はどこに行ったの?」
「さあ? どこに行ったかなんて知らないわ。ロキシーが『よろしければ私も任務に同行しましょうか?』とか言ってたから、王子かジョーカルから何か命を受けたんじゃないかしらね」

 葵がめぐみの方を振り向く。
「……めぐみクン、やっぱりそうじゃない?」
「う、うん……そうかも」
「何がよ?」
 二人だけで納得し合っているめぐみと葵に、取り残された形になったシープが気分悪そうに尋ねると、
「そのディグとルーシーって、きっとめぐみクンの両親のことよ!」
 葵はかなりの自信を持ってそう答えた。

 ……………

 めぐみと葵が王子との謁見に向かっていた頃、哲太は二人とは別に用意されただだっぴろい部屋のベッドに、何をするでもなくただ寝転がっていた。

 ……何してりゃいいんだよ? こんなとこで……
 哲太は一人きりの部屋で退屈を持て余していた。
 いくつかある本棚には、ぎっしりと本が並べられているが、どれもこれも全然読めない文字で書かれていて、一冊手に取ってパラパラとページをめくっただけで読むのをやめた。
 壁に飾られたほとんどの絵画や美術品も、哲太の興味を惹くことはなかったが、ただ一つだけ裸婦を描いた絵画には少しの間見入っていた。が、それもすぐに飽きてしまっていた。

 ……この部屋で待ってろって言われたけど、めぐみたちの部屋にでも行ってみようかな……
 哲太の頭には何度もそんな考えが浮かんできてはいるものの、それはなかなか実行し難いことであった。
 それは、さっきワンピースに着替えためぐみと対面した時につい我を忘れて抱きついてしまっていたからで、とてもじゃないがめぐみとは顔を合わせづらかった。
 それに葵にはさらに危険人物扱いされているだろうことが容易に予想できるので、どうにもめぐみたちの部屋を訪問する勇気が湧いてこない。
 しかしワンピース越しのめぐみのプロポーションが、瞼の裏側にまで焼き付いていて、少し悶々とした気分になっているのを哲太は感じていた。
 そんな状態の哲太の耳に、扉をノックする音と女性の声が聞こえてくる。
 やっとメイドが呼びに来たかとベッドから跳ね起きた哲太が扉の方を見ると、哲太の返事を待たずに若い女性が扉を開けて入ってきた。

「……はじめまして。今日、女性お二人と一緒にこの城に来られた方ですよね?」
「え、ええ……そうですが。どちら様で?」
「申し遅れました。私はこの城に御厄介になっている、フローレンスと申します」
「へ? あ、ああ、どうも。俺は山森哲太です」
 突然部屋に入ってきた女性にお辞儀付きで自己紹介されて、哲太は慌てて自分も頭を下げる。
 そして再び頭を上げると、哲太は目の前にいる女性がメイドではないことに気づく。 
 女性はワインレッドの艶やかなドレスを身にまとっていた。栗色の長い髪には宝石が埋め込まれた髪飾りがきらりと光っている。年齢は二十歳すぎぐらいだろうか、瞳を覆うような長いまつ毛が色っぽい。


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