アッチでコッチでどっちのめぐみクン-18
……一方その頃……
アリーランド領の最北端の海に浮かぶ小さな島々。その中の一つの島にボートで向かう一組の男女がいた。
男性はたくましい大きな体をいっぱいに使ってボートを漕いでいた。その腰には一振りの剣を下げている。
女性は短めの髪を風になびかせてボートの後方に座って目的の島をじっと見つめていた。
そのボートは信じ難い速さで島までたどりつき、乗っていた二人は辺りを見回しながら上陸する。
「……本当にここにいるのかしら?」
「そういう話だ……ほら、あそこ」
男性が指差す方向の岩壁には大穴が開いていた。女性がうなずくと、二人はすぐにその岩壁へと歩き出す。
「……ここで間違いないようね。人が手を加えた形跡があちこちにあるわ」
女性は穴の入り口を細かに観察するとそう結論づけた。
「……よし、じゃ中に入るぞ」
男性が中に入ると、女性もそのすぐ後に続いた。
洞穴の中は一本道で意外に奥が深かったが、人間が悠々と歩けるだけの広さがあった。二人は罠が仕掛けられている可能性も考え、慎重に足を進める。
しかし十数分後、彼らは大した苦労もせぬまま目的の人物を捜し当てることができたのであった。
彼らの目的の人物は洞穴の最奥に造られた、鉄格子のはまった牢の中にいた。
牢の中には小さな水晶球などが置かれた机と椅子、扉の向こう側はトイレと思われる部屋もあり、壁際のベッドの上には髭を長く伸ばした男がいびきをかいて眠っていた。
男性が牢に駆け寄って中の男に声をかける。
「サイファ、起きろ! 俺だ! ディグだ!」
「……あ〜ん? ……ディグ?」
ディグと名乗った男の大声に牢の中の男が目を覚ます。
そして寝ぼけ眼で鉄格子の外に視線を向けると、驚いて跳び起きた。
「!? ディグ!? ディグじゃないか!! 俺だ、俺だよ、サイファだよ!!」
「ああ、わかってる。久しぶりだな、サイファ」
「ディグ、俺を迎えに来てくれたんだな! ルーシーはどうした?」
「私もいるわよ。サイファさん、お久しぶり」
「おお、ルーシー! お前も来てくれたんだ!」
鉄格子の外の二人に、サイファは顔いっぱいの笑みを浮かべた。