ｱｯﾁでｺｯﾁでどっちのめぐみｸﾝ-14
葵は少し考えた後、ぼそっと一言洩らした。
「……馬鹿っぽそうな名前……」
ジョセフはその言葉をあえて聞かなかったふりをして、
「……納得していただけましたか？」
と、聞いてくる。
「……まあね……そんな理由で人を呼びつけるな、とは思うけどね」
「……すみません。でも、来ていただけるのでしょう？」
「……あたしにも来てほしいの？」
「メグミ様にとっては、その方がよろしいようですから」
「……恵クンはやっぱり行きたいの？」
「うん、ボクは行ってみたい」
「……じゃあ、あたしも行くわよ」
「……ありがとうございます。これで私も王子の御期待を裏切らずにすみます。それでは早速参りましょうか」
「ちょっと、あたしたち学校の制服のままなんだけど」
「ご心配なく。我が国に着きましたら、我が国なりの立派な衣服を用意いたしますので、そちらにお着替え下さい」
「……趣味に合えばいいけど……」
「ああ、そちらの方はいかがなされますか？」
ジョセフは哲太もいたことを思い出して尋ねる。
「俺も行っていいのか？」
「あんたは来なくていいわよ」
「ええ、メグミ様のお友達なのでしょう？」
「それは過去の話よ」
葵が哲太なんか誘うなとばかりに茶々をいれる。
「うるせえな！ とにかく、俺も行くぜ」
「……なんでよ」
「よくわかんねぇけど、行くしかねえ気がするんだよ」
「……ホントによくわかんないわね」
「女なんかにわかりゃしねぇよ！」
「ずいぶん大げさに言ってくれるじゃない」
二人の言い争いが続く中、ジョセフは恵の方を向く。
「……それではメグミ様、参りましょう」
「……う、うん。葵ちゃん、行こう」
「あっ！？ 待ってよ！」
ジョセフに続いて恵が透明な穴へと足を踏み入れるのを見て、葵が慌てて二人の後を追う。最後に哲太がおそるおそる中に入ると、透明な穴はすうっと口を閉じた。