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「水面に浮かぶ月」
【ファンタジー 官能小説】

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「水面に浮かぶ月」-1

プクプクプク・・・・。
白い泡は唇から白い月が波打つ水面へと消えていく。
このまま沈んでしまおうか。
ふと浮かんだそんな考えも泡沫のごとく消え去って私はゆっくりと静かな闇が支配する水面へと顔を出した。
誰もいない静かな海。目の前に白い砂浜。
今は月明かりを受けてぼんやりと銀色に染まるその白浜に、黒い影がちらついているのが見えた。
「・・・来た・・・。」
小さく呟いて、私はすべるように水の中を進みだす。
チャプ・・・
耳を打つのはわずかな小波の音。
黒い人影はせわしなく辺りを見回して何かを探しているようだった。
月明かりを受けた浅黒い肌。
時折きらりと光る黒い瞳。
誰よりも・・誰よりも、愛しい人間。
チャプ・・・チャパ・・・
小さな水音を立てて水面に半身を出す私を彼が見つけた。
月明かりに白い歯。
満面の笑みで駆け寄ってくる彼を私はずぶぬれのまま抱きしめた。
誰もいない波打ち際。私たちが絡み合う影だけが水面に輝いていた。
彼の手が私の黒く長い髪を優しく弄っては撫で梳いていく。
「水美(みなみ)、会いたかった・・・。」
彼の手が私の滑らかななで肩にそっと触れ、私は彼の首に腕を絡めた。
「ああ・・・私も・・・。」
思わず漏れた呟きはため息にも似て。
無骨で、大きな手が私の背中を辿り、くびれた腰を撫でて、私の鱗に覆われた下半身を愛しげに撫でてくれる。
熱いほどのその感触に尾びれが思わず震えて静かな波打ち際に小さく飛沫を立てた。
「悠二・・・。連れて行って・・。」
彼はそっと私を抱き上げた。滑らかな鱗はとても滑りやすくて、最初彼は何度も私を落としそうになっていた。今はもう慣れたもので、軽々と私横抱きにして、いつもの岩場の影に連れて行ってくれる。
私は人間ではない。いわゆる、「人魚」と呼ばれる種族。
普通は暗く冷たい海の底にいるのだけど、時折こうしてはねっかえりが水面に顔を出す。
そして、ありがちな話だけど私は悠二と恋に落ちた。
私が地上に上がれるのは満月の夜だけ。
一月にたったの一晩。多くても二晩。
満月の夜だけは、月の力を借りて私の尾びれは二本の足になる。とても痛くて歩いたりはできないけど、悠二と愛をかわすことはできる。
「ん・・悠二・・・。」
「水美・・・。」
彼の手が私の肩を下り、そっと胸の膨らみに触れた。すると、私の下半身からどんどん鱗が消え去り、尾びれが人間の足へと変わっていく。
もう何度も見たけれど、我ながら不思議な光景だった。それまではそんなことができるなんて知らなくて、愛をかわしたいのにどうしていいかわからなくて、悠二にすがり付いておろおろ泣いていた。我慢できなくなった悠二が私の胸に触れなかったら私はずっとそのことを知らずに泣いていたかもしれない。
愛をかわすのはこんなに簡単なのにね。
思い出してくすりと笑う私の顔を悠二が覗き込んだ。
「どうかしたの?」
「最初にあなたと抱き合ったときのことを思い出してたの。どうしていいかわからなくて、泣いてたなんて・・。」
悠二は優しく微笑んで私に口付けてくれた。
「僕も少し泣きたい気分だったよ。」
「ほんとに?」
「ああ。だって、こんなにグラマーな美女が目の前にいるのに触れることもできないんじゃもどかしくてどうかなっちまうよ。」
「ふふ・・悠二ったら・・。」
さあ、もう黙って。
そう言うと悠二は私の唇をふさぐ。
くちゅ・・ちゅ・・・
悠二に教わった濃厚なキス。熱い唾液をお互いに交換しながら唇を、舌を、それから中の奥深いところまで貪りあう。水遊びをしているような音がして少し恥ずかしいけど、悠二に口の中を弄られるとふわふわと気持ちよくてぼんやりしてしまう。


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