少年VS『公園の勇者』-1
少年は大好きな野球をするために公園に来ていた。一人で。
『…フンッ!フンッ!』
素振りを始めた少年。これしかできないしね。
『…フンッ!…フンッ!……フンッ!…フンッ!ハァ…よーし……フゥ…』
わずか六回でへばる少年。なぜかご満悦の模様。そして近くのベンチに座った瞬間……。
『―ベチャッ』
『なに!?』
少年は立ち上がり、自分が座っていたところを見るとそこにはガム。
『……ほう…オレをその程度の粘着力で捕らえたつもりだったか……?』
ベンチを見下すように喋る少年。ぱっと見、危ない人だね!
『貴様なにか言いたそうだな?…フ……「なんで一人で素振りしてるの?友達いないの?」…か?…オイ……貴様なぜシカトする!!?…』
ガムが喋れたら世界中のガムを食べている人間が口の中の悲鳴と戦わなければならない。
『まあいい………ジ・エンドだな…フフ。』
少年は大きく足を振り上げ、物凄い速さで振り下ろした。
『――ガゴォッ!』
みんなの公園の、みんなの為のベンチが一つ、少年によって破壊された。まさに自己チュー。
『……「なんで一人で素振りしてるの?友達いないの?」だっけか?……答えてやるよ。オレが学校の奴らをはぶいてるからだ!故にオレは一人だ。』
多分それはお前がはぶかれている。
『あばよ、次会う時は…もっと粘着力のあるガムになることだな……フ…。』
そんなガムは誰も望んでない。
少年は別のベンチに腰掛けた。
『フゥ…………。』
『あぶなーい!!』
空から降ってくる野球ボール。物凄い速さで少年へと迫ってくる。
『…今日は騒がしい日だな……。ボールよ。来るなら来い。お前の力見せてもらおう。』
――と、腕を組み、仁王立ちする少年。ボールはもう目の前。
『ゴォンッ!!』『アウッ!』
あきらかに痛い。無言の少年。すると……。
『………フ……フフ……アーハッハッハァ!!きかん!きかんぞボールよ!』
『アウッ!』はなんだったんだ『アウッ!』は。
ボールが飛んできた方向から小学生くらいの男の子がやってきた。
『あのー…大丈夫ですか…?』
『フフ…大丈夫だ。…今すぐこの忌まわしきボールのヘタレ野郎を潰してやるからな…。』
てか返してやれよ。