特進クラスの期末考査 『淫らな実験をレポートせよ』act.4-6
「ちょっと待って」
桜の涼やかな声を聞き、振り返るとフリースローラインから桜は綺麗なフォームでシュートを決めていたのだ。
シュ、ットン…
正にお手本の様なシュート。矢田の精神力ギリギリのシュートとは格が違う。
そして、小走りにボールを拾い、その場で軽やかに飛び上がり、片手でボールの後ろを押す様にシュートを決めた。
……ダァンッ、ダム…ダム…
体育館をこだまするボールの音。矢田は桜を見つめたまま、ピクリとも動かない。
…スッ…
桜が片手を矢田の方へ伸ばす。親指、人差し指、中指。その3本の指を誇示した。
「3本。あたしの勝ち」
シュッと矢田にボールを投げる。フリースローライン近くにいるが、矢田は首を横に振って答えた。
「…俺の負けだ」
白い歯を出して二人は微笑み合った。
そしてまた………
ちゅぷ、っちゅぅ、んちゅ……
飽きる事なく、唇はお互いを求めて歪んだ。
ただの皮膚が触れ合うだけなのに、指先や足先が触れるのと何ら変わり無いのに。
人は、どうしてこんなにも唇が触れ合う事を望むのだろうか。どうして、特別だと感じるのだろうか。
キスを繰り返しながら矢田は考える。
…どうして、桜ちゃんだけ違うのだろうか、と。
体育館でフリースローを競った後、桜の賭けは「矢田智春」だった。矢田が「桜」を賭けてキスに至った事から、次へのステップ…つまり、桜が言わんとする行為は明らかだった。
体育館奥の部室に行く桜を、矢田は後ろから追いかける。
脱ぎっ放しのスリッパは、取りあえず体育館内のドア脇にある下足入れに終ってある。
部室に矢田も入り、扉を閉めた瞬間、二人はお互いの身体を抱き締めあった。
鼓動が爪の先まで感じられ、二人の頬は少なからず上気していた。
心なしか背中を丸める桜を見て、矢田は爪先立ちになった。あまり変わりは無いが、少しでも自分が抱き締めている側になりたいのだろう。
そうして互いの体温と、身体の柔らかさを堪能し合うと、矢田が先程味わった桜の唇を舌で舐め上げる。
オレンジに近いぷるっとした桜の唇。ぺろりと舐めると桜がくすぐったそうに笑った。
ゆっくり唇をくっつける。ちゅぷ、と音が聞こえた気がした。
唇をくっつけ合いながら、矢田の骨張った手が桜の太股を這い回る。
ハーフパンツをずり下げ、あらわになった太股を撫でまわした。
しなやかな筋肉の上に、うっすらと乗った脂肪。男とは違うその柔らかさに、キスを中断して矢田は頬ずりをした。
「矢田ぁっ…」
切なげな声が桜の唇から漏れる。少しチクッとする髭の剃り跡や、しっとりとうねる矢田の毛先がくすぐったさを与えているらしい。
「なんか、矢田って呼ばれるとヤダぁって、やめてって聞こえる」
おかしそうに笑うと、桜は紅くした頬を膨らませた。
「そんな事言われたって」
桜が拗ねる様子は何とも可愛い。矢田は右手をスカートの裾に忍び込ませて、柔らかな丘をくにゅっと触った。
「んやぁっ」
桜は眉間に皺を寄せ、恥ずかしそうにしている。
可愛い。素直に矢田は桜を欲した。