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秘中花
【幼馴染 官能小説】

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秘中花〜赤花〜-3

「いっ、いぃぃ――んっ」
 この烈しさが欲しかった。強く深く、…――奥へ奥へ。
 ついこないだまで処女だったのが嘘のよう。
 一瞬の痛みを凌駕するほどの想いが溢れて還る。

(やっぱり亜蓮が好き…)

 だけど、今は云わない。亜蓮を困らせるのは後からでも良い。
 代わりに、凛子は手足で全身いっぱいに抱き締めた。
 密着した肌が汗ばみ、充満した体臭がお互いに染み移っていく。
「あっ、あっ、ああぁ…」
 加速する腰に必死で追い縋る凛子。
 視・聴・触・味・嗅・感覚で丸ごと、無地だった自分が亜蓮色に染まる。
「凛子…っ!」
 やがて快感が凛子の花襞を炙り、身体中を駆け巡って神経が翔んだ……。




『赤姫』
 歌舞伎では、真っ赤な振袖を着た女役がある。
“世間知らずのお姫様”と、捨て身で燃えるような恋を貫くのが特徴だ。


(…相変わらず真っ直ぐだ)

 亜蓮は畳に散らかった紅い襦袢を拾う。そして口づける。
 横で眠る凛子に、16の誕生日祝いとして贈ったものだ。
 夜はもう近くまで来ている。帰すべき時間だが、あと少しだけ…。

「私、亜蓮が好き!」
 小さな頃から惜しみなくぶつけてきた凛子。
 怖くも愛しい……。
 その想いを『赤姫』に見立てたのだ。鮮やかな振袖で、表立って応えてあげられない代わりに――…。
 俺は狡い。
「いつか、いつか…きっとね」
 凛子の気を持たせながら、長く細長く繋ぎ止めてきた。

(ずっとずっと俺を好きでいて…)

 『破瓜』に二重の意味を込めながら…。
 『瓜』が八・八でわかれ、足せば女子16歳。その記念すべき夜に処女貫通。
 せめてものの自制心だと笑って許してくれ。
 長年俺の体に纏いついてきた垢が、凛子の赤によって浄められていく。
 すべては舞のため、若月家のため…。伝統芸能の家系に生まれた凛子なら、解ってくれるだろう。
 今は未だ云えないけれど、いつかはいつかは……。
 この紅襦袢を俺の心だと思って息衝いてくれ。


 全開する情熱が色褪せぬように――…。


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