今は。そしてこれからもずっと・・・-2
「蒲乃菜ちゃん……」
僕は、見つめていた写真を、机の上に戻した。
僕の名前は、長瀬渡。
どこにでもいるごく普通の高校生。
「……」
ただ生きる事に意味と意義を見つけられなくて無気力なだけの。
そして今、僕は十七年間生きてきた中で最悪の絶望感に包まれていた。
僕には、小学校の頃からずっとずっと好きだった人がいた。
その子は、優しくておとなしい性格の美人だったんだ。
綺麗なストレートの黒髪。
綺麗に整った顔立ち。
スマートで、抱きしめたら壊れてしまいそうな華奢な身体。
身にまとう独特の物静かでおしとやかな雰囲気。
天城 蒲乃菜(あまぎ ほのな)ちゃん。
僕は、彼女の全てが彼女が好きだったんだ。
そして高校生活も後半へと移り、僕は大きな決心をしたんだ。
僕は彼女に好きだって告白したんだ。
もともと気の弱い僕だったから、勇気を振り絞って告白したんだ。
でも―――。
「…ごめんね。渡君。」
…だめだったんだ。ボクは。
彼女は、ほんとに申し訳なさそうにそう言って俯いてしまった。
僕は、悲しかった。
いままで生きてきた中で何よりも。
でも僕は彼女を恨んでなんかいなかったんだ。
本当に。これっぽっちも。
だって、それは彼女が悪いことじゃないから。
悪いのは僕なんだ。
彼女に気に入られなかった僕が全部悪い。
そう、僕が悪いんだ…。
「謝らなくていいよ。…じゃあね。また明日。」
「…ごめんね。じゃ…」
だから僕は申し訳なさそうな蒲乃菜ちゃんに謝ったんだ。
本当は、なぜ僕じゃ駄目なのかを問い詰め、納得のいく答えを返して欲しかった。
そして、僕は彼女に食い下がって交際を迫りたかった。
…でも、それじゃ意味がないんだ。
僕が彼女を好きで彼女も僕を好きじゃないとダメなんだ。
だから、僕は彼女を諦める事にしたんだ。
醜く彼女を求める僕の汚い心を断ち切るように僕は家に走って帰ったんだ。
…その時、僕はまだ知らなかったんだ。
…その時に傷ついた僕の心なんて全然たいした事じゃないって。