興味はゼロ!-3
第三章
あの日からアシタバは閉鎖的になり、めっきりと人付き合いが減った。アルテミシアとの恋が叶わなかった悲しみは次第に痛みになり、どうしようもない怒りの感情へと変わっていった。そして彼の怒りの感情は、周囲の人間へとその矛先を向けていくのだった。
ある日、彼は2年間勤めていた翻訳業の事務所を突然退職してしまった。それからは毎日部屋に閉じこもり、ぶつぶつと独り言を言うのだった。
「バジル、僕なら絶対大丈夫って言ったのに…そういえばチコリーも僕ならきっと気に入ってもらえるなんて言ってたな、みんな調子のいい事ばっかりだ。」
「アルテミシア、あれから口もきいてくれないなんて…話しかけても他のウェイトレスが邪魔するし…まるで僕が悪者みたいじゃないか」
そんなことをつぶやきながら毎日を過ごしたが、やがて彼はわれに返り、心の中で悲鳴のような叫びをあげた。
「僕は恐ろしい…今まで正直に真面目に生きてきたじゃないか。それなのにたった一つの失敗でこれほどまでに人を憎むなんて…主よ、神よ、僕はあなたを信じます。だからどうか、この苦しみからお救いください。」
彼は日々自らが信じる神の名を心で叫び続けた。そんな彼の強い感情はやがて精神の世界に作用し、いつしかそれは彼にとっての本当の神となり、現実の世界に姿を現した。
それは形のない、光そのものであった。アシタバにはそれがすぐに自分の信じる神としての存在だとわかった。
「主よ、僕…いえ、私は怒りの感情による支配を許し、醜い心を持ってしまいました。私はこの世界における『存在』として認められても良いのでしょうか?」
光は人の声で答えた。
「認めます。」
「主よ、私の怒りはつくづく身勝手です。それで人々にまじわれば、私は彼らの最も憎む者となるでしょう。」
「…はい。」
「私は人生の中にいつも努力の成果としての結果を求めてきました。そしていつの間にか、今の私のような結果を出してしまいました。私は汚い心の人間です。」
「認めます。」
「主よ、私はこの結果を認めるつもりです。しかしあなたが私の結果を認めないというのなら、どうかお裁きをお与えください。」
「アシタバさん、あなたが自らの出した結果を認めるというのなら、わたしはあなたの存在を認めます。」
アシタバは巨大な竜になった。