興味はゼロ!-2
第二章
実はアルテミシアには大きな欠点があった。彼女はたった一つ、見た目の美しさが足りなかったのだ。ふっくらとした顔立ちに濃い眉毛、それに垂れ気味の細い目と大きな口をしていた彼女の顔立ちは、お世辞にも美しいとは言えなかった。実際、彼女と付き合いたがる男性は滅多に現れなかった。しかしアシタバはそんなことは全く気にしなかった。それどころか異性関係にはまるで自信のもてない彼にしてみれば、それくらいの方が近づきやすいとさえ思っていた。
他の飲み仲間達にもはやしたてられ、ある日アシタバは自分の気持ちを思い切ってアルテミシアに打ち明ける決心をした。
仕事場の事務所を早めに出ると、混雑する時間になる前にアシタバは酒場へと急いだ。
…カランカラン…酒場の来客を告げるドアのベルが鳴った。アシタバはグッと鼓動が高鳴るのを感じた。
「いらっしゃいませー。」
他のウェイトレスに混じってアルテミシアの声が聞こえた。彼女はアシタバに気づくと、ニコッと笑って挨拶した。
「あら、アシタバさん、今日は早いのね。いつもの麦酒でいいかしら?」
「あ、いや…そのぅ…今日は飲みに来たんじゃないんだ。ア…アルテミシア…これを。」
そう言ってアシタバは自分の気持ちをしたためた一通の手紙をアルテミシアに渡すと、他のウェイトレス達の視線が気になって慌てて酒場を出ていった。
「え!アシタバさん!?…私、こういうの…困るんだけどな…」
その日、厨房ではアルテミシアとアシタバの話で持ちきりだった。
「ねえアルテミシア、彼と付き合うの?」
「なんか誠実そうな人だったし、いいんじゃない?」
他のウェイトレス達がせきをきったように話し始めた。
「え!?…う〜ん、でもぉ」
アルテミシアはなかなか煮えきった返事をしなかった。
実際のところ彼女にとってアシタバは、他の男性と何の変わりなく映っていた。いや、どちらかというと女性に縁のない彼のことを同情混じりに見下してさえいた。なにしろアルテミシアの周りには彼女のことをどう思っていようと関係なく、男だらけなのだ。アシタバにとっては一生を決め兼ねないような一大決心だったであろうが、アルテミシアにとってはその気のない男性からの求愛など、まるで自分の魅力を引き立てるためだけにのみ役立つもの、言ってみれば、化粧のように思っていた。