〜甘い果実〜-7
「出来ないだろうことは判っていた。ここまでにしておくから、ちゃんと国へ帰れ」
「!!」
「部屋を出ているから、その間に服を着ろ。そうしたら私が送っていこう」
荒療治ではあるが、これだけ恥ずかしい思いをしたのだから大人しく帰るに違いない。そう考え、部屋を出ようとしたケインの足を止めたのは、意外なリグの返事であった。
「できるもんっ!」
「…リグ?」
振り向くとリグは頬を膨らまし、ケインのことを睨みつけている。受け取ったタオルを固く握り締めたまま。
「お、おい…」
予想外の反応にケインは思わずうろたえてしまう。
「できるもんっ」
リグはそんなケインにもう一度、挑むように怒鳴るとタオルを床において自分の背中に両手を回す。すぐにぷちっという音を立てたかと思うと、平板な胸板を覆う真っ白なシルクのブラジャーが支えを無くしてたるんだ。
「ば、ばかっ」
リグの行動に慌てて左手で目を隠し、顔を背けるケイン。
「ばかじゃないもん!や、やれって言ったのは…ケインちゃんじゃないかっ」
一方のリグは火を噴き出しそうなほど顔を真っ赤にしながらもブラジャーを外し、そっと床に置いた。
「賭けはまだ終わってないよっ!ちゃ、ちゃんと…ボクを、見てよね……」
かすれそうなリグの声にケインはどきりとする。
必死の訴え。
そこにいるのはケインが知る実験好きの無邪気な少女などでは無かった。
恐る恐る視線を戻すと、胸元で両の掌を固く握り締め、まなじりに大粒の涙を溜めるリグと視線が合ってしまう。