俺と俺様な彼女 〜5〜-2
「じゃあ、行きましょうか。」
「はい。」うわぁ〜、緊張する。
「何緊張してんのよ?」
「いや、そりゃ緊張しますって。」
「そんなもの?」
「そんなものです。」
「ここよ。」
「へぇ、いい家ですね。」先輩の家は結構でかかった。
「ただいま。」
「お邪魔しま〜す。」
「姉ちゃん、おか・え‥り…」
「あっ、ども。初めまして。」たぶん弟かな?中学生っぽいし。
「お、おかーさーん!!姉ちゃんが男の人連れてきてる!!」
「えっ、うそ!?」ばたばたばた…
「あら、本当!!」おぉ、先輩そっくり。でも先輩と違ってやさしそうだな。でもその反応、俺が来ること言ってないの、先輩?
「あの、初めまして。谷岡数馬です。その、俺が来ること知らなかったんですか?」
「いえ、お友達が来るとは聞いてたけど女の子だとばかり思ってたから。とにかく、中にどうぞ入っていらして。」友達って、ちょっと先輩。
「あの、先輩。友達って何なんですか?」
「いいじゃない、別に。人が来ることに変わりはないんだから。」
「良くないですよ!友達と彼氏だったら意味合いが全然違いますよ。」
「…恥ずかしかったのよ。彼氏って言うのが。」少し顔が赤い先輩。
…なんでこういうことをたまに言うのかなぁ。怒るに怒れないじゃん。
「とにかく、あがって。」
「あっ、はい。」
「リビングで待ってて。」
「わかりました。」
「ふう。」とりあえず腰掛ける。キッチンでは先輩のお母さんが『男の子だったらもっと早く言いなさいよ。料理足りるかしら。』などと言いながら慌しく動いている。
「ねえ。」
「ん?」弟登場。
「俺、月宮貴人(たかと)」
「ああ、俺は谷岡数馬。よろしく。」あんまり先輩には似てないな。お父さん似なのかな?
「すうま?」
「数学の数に馬だよ。」
「へぇ、ふざけた名前だね。」うん、似てないけどやっぱり先輩の弟だわ。発想がまったく一緒。
「あんまり年上にそんなこと言わないほうがいいぞぅ。」とりあえず、ほっぺたをつねる俺。
「いたた、ごめん、ごめんなさい。」先輩よりはまだ素直だな。いいことだ。
「いてて、ひでぇよ、数兄。」
「すうにい?」
「そう呼んじゃだめ?」
「いや、かまわんぞ。」
「ねえ、数兄。数兄って姉ちゃんと付き合ってるの?」
「ん、まあ、そうだよ。」
「身内の俺が言うのもなんだけどさ、あの姉ちゃんとよく付き合ってられるね。」
「いや、まあ楽しいよ。」
「数兄ってさ、M?」
「ぶはっ!?!?」 やばい、否定したいけどできねぇ。
「姉ちゃん、顔はいいと思うけどさ、あの性格だしよく今まで精神病まずにもったね。」
「いや、それは言いすぎじゃない?それに貴人君も無事なんだしさ。」
「俺はさ、慣れたよ。」 嫌な慣れだな、おい。それにそんな遠い目は中学生には似合わないよ。
「でも、少し謎が解けたよ。」
「謎?」
「うん。姉ちゃんさ、一ヶ月ぐらい前から機嫌がいいんだよ。何でかなぁ、って思ってたんだけど数兄と付き合いだしたからだと思うよ。」
「貴人君、その話もっと詳しく教えてくれないかな?」
「今まで姉ちゃんどことなくつまらない感じがいつもあったんだけど、一ヶ月ぐらい前から明るくなったんだよ。数兄と付き合いだしたのもそれくらいからでしょ?」
「その話本当?」 「うん。」
あの先輩が?信じらんねぇ。
「でもさ、言いづらいんだけど、姉ちゃんの顔、新しいおもちゃもらった子供みたいな顔にもよく似てるんだよ。」
ああそうだな、そのほうが先輩らしいよ。だけどなんで涙出るんだろう。