円満堂・逆ハーレム【2】-3
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「やっ、やっぱ帰るっ!」
只今の時刻…午前1時57分。あと3分で…
オバケのでる時間………
「無理だから。」
冷たくそっけない、なっちゃんの声。
無理だからって…無理ってだって…
「お墓じゃんよぉ!!」
そう、ここは……
お父さんと不二子の…
あ…
「毎週、来てる。」
隣で、なっちゃんは鼻をすする。
ぎゅっと握られた右手。
思わず、見上げてしまう。
「なっちゃん…?」
「俺…」
そ…っと、なっちゃんは墓を撫でる。
「嫌だったんだ。不二子が再婚するの。」
え……?
「父さんが死んで、不二子は必死で働いてた。綺麗だったのに…くすんじゃってさ。」
へへっ、と笑って、なっちゃんはアタシを見た。
その哀しげな顔に、思わずドキっとする。
「そんな不二子だから、賛成したかったけど…やっぱ父さんを裏切ってる気がして…」
4人が初めてウチに来たときのことを思い出す。
壱成と、なっちゃんと、参仁と……。
初対面で、なっちゃんにだけ目を反らされた事を。
それと……――
なっちゃんには、未だに名前を呼ばれたことがない事を。
そんな事を考えていると、なっちゃんはニヤッと笑って、意地悪そうに言った。
「今日…アンタと墓来ようと思って、早く帰ってきたんだけど…兄貴とイチャついてたからさ。」
「イチャついてなんかないっ!」
墓場に響き渡るアタシの声。
なっちゃんは、ビックリしたようにアタシを見つめる。
そして、笑う。
「…そっか。ははっ…」
今アタシの顔は真っ赤だろう。
あんなに精一杯否定しなくても良かったのかもしれない…。
怖いけど…暗くて良かった。