円満堂・逆ハーレム【1】-3
「ぁ…悪りぃ……」
初めてみた、泣きそうな顔。
眉間に皺を寄せたような、悔やんでる顔。
「…下、行って。」
突然のことで、足が動かない。
立ちすくんだまま、黙っていた。
「早く行けよ!!!」
バタン!!
思いきり閉められたドア。
ドアに付けた、【なっちゃんの部屋】(手書き)が揺れる。
一気に現実に戻される…
「えっ…えぇ?!」
キスをした。キスをしてしまった。
義理だけど、兄弟の…なっちゃんと。
そして、拒否られた。
立場ねぇ…。
「ど…しよ…」
壱成に知れたら大変なことになる。
でも…黙っておけば、バレないかもしれないし…。
あぁ、ぁぁぁぁぁ……。
アタシは、階段を静かに降りた。
リビングに居る問題児と、
今あった大事件と、
昨日から遊びに行ったまま帰ってこない不良と、
夕飯のメニューに頭を悩ませながら………―――。
●つづく●