真っ白な世界-1
―――前からトラックが迫ってくる。
―――あと少しでオレをはねとばすだろう。
―――なんだろう?意識……が……だんだ……ん。
目が覚めたらそこは真っ暗な闇だった。……オレは……子供を助けようとして…道に飛び出して………。………歩いても歩いても何もなく、何も見えない。……すると前の方から光りが迫ってくる。だんだんとそれは大きくなりオレを包んでいった――………。
『ここは…?』
『今からあなたにあなたが生きてきた人生の1番の思い出を見てもらいます。』
突然頭に響いた声。
『誰だ!?』
『誰かなんてどうでもいいことです。あなたは分かってるんでしょう?もう少しで死ぬ事を。』
たしかにオレは……トラックにひかれそうになって……。けどだんだんと意識が……。
『いったいどういうことなんだ?』
『だから言ってるじゃないですか。1番大切な思い出を見てもらうんです。走馬灯って知ってますよね?そんな感じです。あなたはもうすぐ死ぬので……最後にあなたが生きてきた人生の1番の思い出を見てもらうんです。……見終わったあと…すぐに現実に戻り……あなたはトラックにひかれて死にます。』
こんな非現実な事が起こるんだろうか?
『………わかった。……』
『あなたは怖くないんですか?見終わったらすぐに死ぬんですよ?』
『怖いさ!!……けど……』
『けど?』
『けどずっとここにいる訳にはいかないだろ?…』
『まあそうですけどね。こちらにとっても迷惑ですし。――』
――オレは正直恐かった。これから死んでいくのが…。もう会えない家族。もう会えない友達。もう会えない恋人。
『それじゃあ今から……やりますんで。
あなたは人生を立派に生きました。せめてもの手向けに1番大切な思い出を見て…この世から去ってください。』
『声』が言い終わった瞬間に、オレはどこかに引き付けられるように消えていった。
――着いた場所は……あぁここは……。