投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

伝えられないコトノハ
【青春 恋愛小説】

伝えられないコトノハの最初へ 伝えられないコトノハ 0 伝えられないコトノハ 2 伝えられないコトノハの最後へ

伝えられないコトノハ-1

「長谷川?」

 小さな声が資材室の窓の外にいた僕を呼んだ。
「こんなとこにいたの?」

「あれ? 落合じゃん」

 僕が上を向くとキミと目が合う。

「うっわ。顔色、悪っ! どーしたの?」

 僕を見下ろすキミは、怪訝な顔をして叫ぶ。

「職員室のタバコの匂いにあてられてさあー。酔っちゃった」

 ヘラッと笑ったらキミはキミは僕の額を指先で軽く叩いた。
 触れられた所から少しずつ熱が戻ってくる。

「茶化さないでよ」

 キミの透明な瞳を見つめた。
 大きな目が僕を案じている。

「うん……。茶化しては、ないよ?」

 僕が戸惑いながら言った言葉に、ため息をつくキミが見える。

「どーかした?」

 失いかけた笑顔を、一つずつ組み立てながら僕は立ち上がった。
 頭一個分上に、キミの瞳があった。

「強情」

 キミがムッとている。

「落合も十分強情。どいて、あがるから」

 窓の桟に手をかけると、キミが細い手を出してきた。

「なに?」

「あがるんじゃないの?」

 頬を赤く染めたキミがいる。
 その手に触れる。
 僕の冷たい手の中にキミの熱が流れ込んでくる。

 ああ。キミが好きだ。

 そう思っている自分をバレらさないように、顔に力を入れた。
 窓を跨いで室内に入る。
 ひんやりとしていた。
 僕を覗き込んでくるキミの顔に触れたい衝動を堪えて、僕は微笑む努力をする。

「まあ、委員長サンがこんな所で油を売っていたことは、内密にしといてあげるわ」

 不敵に微笑んだキミは、スカートを翻すと近くにまとめてあった角材を持った。
 くすりと鼻で嗤うキミが角材を振りながら、言う。

「そのかわり、殴ってあげようか?これで」

 歪められたキミの唇の、その赤さに僕の中の血が沸き立つ。

「それは止めて。落合さん」

 キミの手の中にあった木材に僕は触れる。
 そんなものに触れただけでも、僕はキミに触れた気分になるというんだから、アホだ。アホ男児。


伝えられないコトノハの最初へ 伝えられないコトノハ 0 伝えられないコトノハ 2 伝えられないコトノハの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前