伝えられないコトノハ-3
ああ。
この人を抱きしめて、いいですか?
ストップをかける自分の中にいる存在。
理性?
違う。
コンプレックス?
何の?
なんだか別な存在が眠っている気がするんだ。
そんなことを考えている自分に寒気がする。
でも、好きだ。
怒っていても、はにかんでいても、照れていても、叫んでいても。
自分の感情を誤魔化さないキミが好きだ。
「いつまで手ぇ乗せてるの!」
するりと僕の下から抜け出たキミが、資材室の扉を開けた。
僕を振り返って笑った。
「今の湊人クン、ちょー情けない顔してますよー」
僕はしまったと、片手で顔を覆って、瞳に力を入れた。
「たまにはいいんじゃない?」
細められたキミの瞳に、僕の体の中から気持ちの悪い感じが溶けてゆく。
「あー。気のせい気のせい。オレはそんな情けない顔はしないですよー。見間違い。香夏の見間違いー」
「ったく。意固地め」
キミの声を聞きながら、思った。
僕はいつか言えるだろうか。
キミが好きな僕がいることを。
♯END♯