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『あなたへ。
あなたはいつも僕のそばにいました。覚えてますか?初めてお祭りに行った時を。あなたはずっと騒いでましたね。けど帰るころは疲れきって何も――』
――ここまで来て僕は目から涙がこぼれそうになった。いざ手紙を書いてみると……こんなにも感情が吹きでてくるなんて。……涙をこらえ、続きを書き始めた。
『―何も言わなくなっちゃいましたよね。そういうところがとても愛おしかったです。大好きでした。あなたが僕の事を好きでいてくれることで幸せでした。……あなたがいたことで僕はとても幸せでした。それが当たり前でした。あなたも幸せでしたよね?
……辛い時も。楽しい時も。悲しい時も。笑い合ってる時も。全部二人の想い出です。――』
想い出……か。なんとなくその言葉が頭に残った。もうあなたとの新しい想い出は作れない……。……想い出………そう思うとあの時の事が蘇ってくる…。
『――けれど別れは突然やってくるんですね。……交通事故。交通事故であなたは簡単に逝ってしまいました。――』
その事実を文字に表すことで…頭の中にはその時の事が浮かんだ。……自分が嫌になるくらいに僕は成長してない。……また今ここで涙を流してるなんて……。
涙を拭い、続きを書き始めた。
『とてもつらかった。一人残された僕はどうすればいいんだろう?なにをすればいいんだろう?………いっその事、僕もあなたのところへ行こうかと思いました。……けれど――』
けれどきっとそんな事したら怒る……よね?僕はそう思ってた。だってあなたの事を1番知ってたのは僕だもの。あなたの性格はきっとそうだよね…。
『――けれど僕は死にません。あなたの分まで生きます。……つらいことがたくさんあるだろうけど、乗り越えて……その度に乗り越えてやります。最後に……ただ一つ気掛かりがあります。あなたは――』
――あなたは元気ですか?――
その一言が重かった。ただ胸を締め付けた。ペンを握ったまま、また涙を流していた。
『あなたは――』
ここまで書いて、思い出すのはあなたの笑顔
『――元気―』
ここまで書いて、思い出すのはあなたの冷たくなった顔
『――ですか?』
いろんな想いがこの言葉につまってる。
『―あなたは元気ですか?天国はどんなところですか?もし僕がそっちへ行くような事が起これば……その時は案内してください。忘れないでください。僕との幸せを。』
――この手紙をあなたに届けたい。
――無理だよね?わかってる。なら手紙は机の奥にしまっておくよ。
――願いがもし叶うならこの手紙をあなたに届けたい。