【理科室】-3
突然、
「今の所、理解出来たか?」
って振り返って質問してきた。
だけど皆はやる気がないのか、解らないのか、答えずにいると、
「なぁ、月(るな)。
ちゃんと解った?」
って。
先生はいつも最後には私に聞いて来てくれる。
多分、私なら答えると思っているからなんだろうけど。
でも、
それでも、
その事実がとても嬉しくて、
先生に見つめられて少し赤くなりながら、
「うん、解ったよ。」
って、
気付かれないように、
素っ気なく答える。
「そっか。」
って一言言って、また説明に戻る。
その瞬間が大好きで、得意じゃない勉強も、先生のだけは頑張れる。
本当に、私の全ては先生で出来ているんだ。
もう少しで、この幸せだった空間も終わってしまう。
そんな事を考えていた時、
「先生、今日、機嫌悪い?
あっ、もしかして彼女と喧嘩とか??」
男子の1人が余計な事を聞いた。
その瞬間、私の胸は悲鳴を上げた。
「はぁ〜…うるさい。」
先生は呆れながらも否定はしなかった。
「やっぱそうなんだ!
何で喧嘩したの?」
また余計な事を誰かが言った。
「お前らには関係ないだろ。
はいっ、授業終わり。」
と言って皆を理科室から追い出そうとしたけど、興味の方が先に立ち、動く者はいなかった。
「せんせぇ?」
女子の1人が上目使い、甘い声で話しの続きを催促している。
「はぁ〜…ったく。」
それが効いたのか、皆の根気に負けたのかは解らなかったけど、観念した様に話し始めた。
「昨日、喧嘩しました。
原因はちょっとした意見のすれ違い。
時間なくて仲直りする暇なかったってだけで、お前らのネタになる程面白い話しじゃないから。
まぁ、明日には元通りラブラブだよ。」
私の心に冷たいものが走った。
聞かなければ良かった。
私1人でも、席を立てば良かった。
今更、後悔しても遅いのに。
実感させられた。
先生は誰かのもので、
先生の1番はその、誰かなんだという事を。