投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

「痛いのトンデケ」
【純愛 恋愛小説】

「痛いのトンデケ」の最初へ 「痛いのトンデケ」 1 「痛いのトンデケ」 3 「痛いのトンデケ」の最後へ

「痛いのトンデケ」-2

「あ、阿川センセーだ。」

彼女と再会したのは、3時間後だった。彼女は大学内の書店に一人でいた。

「ああ、藤谷だっけ」

「もう名前覚えてるの?スゴいね」

「ってかおまえ、先生には敬語を使え」

「えー、だって阿川センセー、先生って気がしないもん」

彼女は俺を見ながらケラケラ笑う。

昔飼ってた黒猫、タケに似ていると思ったのは気のせいかもしれない。
藤谷リカはよく笑う娘だった。

「藤谷は俺の飼ってた猫によく似てたんだ。だから覚えやすかったのかもな」

「えー、ひどーい!」


タケが亡くなったのは、俺が高二の頃くらいか。その頃俺は部活が忙しくてあんまタケに構えなかったな。タケは猫としては長生きしたほうなんだろう。

「センセ・・・?」

「あぁ・・・ってぇー!!」

ぼーっとタケのことを考えていたら本で指を切ってしまった。

「うわー、先生何やってるの。あ、私ばんそうこ持ってるから」

「あ、ありがと」

彼女が俺の中指にばんそうこをはる。

「紙で指きったら案外痛いよね〜、痛いのとんでけ」

痛いのとんでけ
その一言に、俺の胸がチクっと痛くなった。言葉の意味と逆じゃん、そう思って笑いそうになった。

「んじゃ先生さよーならー」

彼女は何かの本を買い、どこかへ行った。




「藤谷さんは今日欠席です」

2回目のゼミの集まりに藤谷は来なかった。
理由は体調不良らしい。

「あ、でも俺、藤谷見たぞー」
「えー、今日休むってメールきたよ〜」
「中庭のベンチで寝転がってたの藤谷に見えたけど」
「こんなに寒いのに中庭にいるの〜?ありえねー」

学生が話しているのを制して卒論の話をすすめた。

頭の中は藤谷しか無かったけれど。

卒論の話し合いが終わり、俺は中庭に行った。

藤谷は足をたたんでベンチに横になっていた。

彼女に近づくと、泣いていることがわかった。

わかった一瞬俺はすごくドキっとして、かける言葉が出てこなかった。


「痛いのトンデケ」の最初へ 「痛いのトンデケ」 1 「痛いのトンデケ」 3 「痛いのトンデケ」の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前