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刃に心
【コメディ 恋愛小説】

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刃に心《第7話・舞台という名の戦場》-6

「絶対に朧殿にやましい感情を抱かぬと」

その時、疾風には木刀が真剣に見えたと言う。

「それが…朧殿に対する礼儀であろう」

楓は疾風の目を見つめた。月が静けさを伴い、疾風と楓の頬を照らしている。

「分かってる」
「本当だな?」
「ああ」
「ならば…良い。朧殿、より良い劇にしてください」

朧は微笑んで軽く頭を下げた。

「そう言われたら、頑張らないわけにはいきませんね♪さあ、疾風さん、もう少し頑張りましょう♪」

◆◇◆◇◆◇◆◇

一通りの立ち位置の確認と殺陣を行った後、朧がポンッと手を叩いた。

「では、今日はこのくらいにしましょう。お疲れ様でした」
「はい」

その言葉に疾風と霞は苦無を納め、帰り支度を始めた。

「じゃあ、アタシは帰るけど…」

千夜子は朧に近付いていった。そして、小さく低めの声で一言。

「……疾風に手ぇ出したらぶっ殺すからな……」
「怖いですねぇ♪」

朧はやんわりとそれを回避。千夜子は忌々しげに朧を睨むと足音高く、家路についた。

「じゃあな、疾風。絶対にその性悪女と仲良くなるんじゃねぇぞ!」

疾風は苦笑しながら、千夜子を見送った。

「じゃあ、俺達も失礼します」

疾風が鞄を肩にかけながら、朧に向かって言った。

「ええ。また明日お願いしますね」
「あ、私、部長と打ち合わせしながら帰るから」
「分かった。先に帰るからな」
「では、失礼します」

疾風と楓は並んで帰路についた。

◆◇◆◇◆◇◆◇

「…楓ねえさんは礼儀とか言ってたけど、完全に嫉妬ですよね♪愛する人が他の女と抱き合うのは嫌だ〜、なんて♪
ふふっ…かわいいんだから♪」
「そうですねぇ♪」

その背中を見送りながら朧と霞がにんまりと微笑んだ。

「そういえば、あのお二人は許婚ですよね?」
「そうですよ」
「どこまで進んでるんですか?」

興味津々、目を輝かせて朧が尋ねた。

「残念ながら、期待しているようなことは一つも…」
「それは、それは…」
「楓ねえさんは兄貴に惚れてるから家に来たみたいだけど、兄貴は楓ねえさんは好きとか関係なく、約束だから来たって思ってるみたい。
ったく、鈍いんだから…私が男だったら、速攻で押し倒してるっつうの!」
「しかも、功刀さんも疾風さんにご執心みたいですねぇ♪」

楽しそうに微笑む朧。


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