俺と俺様な彼女 〜4〜-2
〜土曜日〜
「よぉ、数馬。早いな。」
「ああ、憲一か。」
「他は?」
「まだだ。先輩が来る時間はわかってるけどな。」
「何でだ?」
「あの人は約束の時間の±1分以内に絶対来る。それより早くも遅くも来ない。」
「・・・マジでか?」
「先輩は待つのも待たすのも嫌いなんだよ。それで一回死にかけた。」
「何があったんだ?」
「約束の時間に三分遅れたんだよ。」
「どうなったんだ?」
「聞きたいか?」
「いや、いい。その顔で充分だ。」
「っと、結衣が来たぞ。」
「向こうから月宮先輩も来てっぞ。・・・俺の時計だとまだ二分あるけどな。」
「その時計が狂ってんだよ。先輩は二ヶ月に一回時報で時計を合わせるって言ってたからあっちが正確だ。」
「どんだけ几帳面なんだよ。」
「少し遅れた?」
「いや、先輩と同時だから限りなく正確だ。」
「どういう意味?」
「後で憲一に聞け。先輩、こいつが幼馴染の奥野憲一で、こっちがその彼女の太田結衣です。」
「太田結衣です。」
「奥野憲一です。」
「初めまして。月宮保奈美です。」
「あっ、じゃあ一応俺も、」
「あんたはいいのよ。みんな知ってるんだから。時間の無駄よ。」
「・・・」泣くな、耐えろ俺。
「話には聞いてたけど、実際に見てみると相当ね。」
「ああ、こいつにこんなに同情するのは中学のとき、財布落として交番行ったら届けられてたけど、中身が空っぽだった時以来だ。」
「えっと、奥野君。」
「あっ、憲一でいいですよ。」
「私も結衣でいいです。」
「じゃあ、憲一君に結衣ちゃん。行きましょうか。そこの馬鹿は放っといて行きましょうか。」
「ひでぇよ、先輩。」
「・・・お前、苦労してたんだな。」
「気付くの遅えよ。」
「まあ、行こうぜ。」
「お〜し、歌うぞ〜!」
「数馬はどんなの歌うの?」
「いろいろですね。パンク系とかも歌いますよ。先輩はどんなのですか?」
「まあ、最近の曲を中心にね。」
「しゃあ〜、一番憲一行きま〜す。」
「お〜、行け行け〜!」
「いぇ〜い、ノッてるか〜?結衣」 「ノッてますか〜、先輩?」
「はいはい、ノッてるわよ。」
「仲いいわね、あの二人。」
「ええ、なんだかんだ言って幼馴染は伊達じゃないですよ。」
「少し妬けるわね。」
「えっ!?」
「どうしたの?」
「いえ、数馬の話聞いてると先輩がそんなこと言うとは思ってなかったんで。すいません。」
「あはは、いいのよ。」
「あの、先輩は数馬のこと・・・好きなんですよね。」
「さあ、どうかしらね。」
「顔に答えが出てますよ、先輩。」
「そう?」
「でも安心しました。」
「安心?」
「はい。数馬、先輩に好かれてるのかどうかわからない、ってたまに言ってましたから。」
「そう。」
「それに、数馬は数馬で先輩の性格知らないで告白したから、最初はどうなるかって思ってましたよ。」
「えっ?」
「知らなかったんですよ、数馬は。憲一の話だと数馬はどっちかっていうとおとなしい子がタイプみたいですから。」
「そうなの?」
「あっ、心配しなくていいですよ。数馬今は先輩に本気で惚れてますから。」
「まあ、心配はしてないけどね。」
「何の話してるんですか?」
「数馬は音痴って言ってたのよ。」
「ぐはぁ、人が気にしてることを。」
「あら、知ってたの?ならまだ救いようがあるわね。」
「うう、ぐす。」
「泣くなよ、数馬。ほれ、一緒に歌うぞ。」
「ちくしょー、今日は歌いまくってやる。」