オーディン第五話『悩めるオーナー・後編』-3
ファウストは鼻をこすり顔を赤らめて返事をした。
「なんたって、これがレストランから車を奪った報酬だ、乗り心地はきっといいはずだ」
狼は嬉しそうにその箱に飛び乗った。フレイヤは眉をひそめながらそれに乗り込む。
「じゃあな」
ファウストはそう言うと、後ろふり向き誰もいない所に手を振った、そしてゴーグルをつけると猛スピードで走り去って行った。
「姿は消えてるんですがねえ、心眼というやつですかね…」
空間が歪み白い水蒸気が人の形を描くと、それは少しずつルシファーに変わっていく。彼は頬かきながら頭を傾げていた。
「ルシファー」
ルシファーが後ろを振り向くと黒いコート姿の人物が立っていた。
「ロキ、早いですね、次の仕事も用意できていますよ」
ルシファーはそう言ったがロキは返事をしない。
フード下のロキの顔は怪しく笑っていた。