無銭湯記スパゲッチュー 〜復路〜-16
第36話 『決戦』
最後の作戦を決行する。
「一発勝負ですわよ、ユグン!」
機械鎧の前に飛び出したフィリスが、叫ぶ。
フィリスはキャスターロッドを投げ捨てた。
それを見て悪党ボス。
「田舎魔道士風情がっ! 魔法の杖を捨ておってからに、なにが出来るというのだ! 貴様ごときにこのカラクリ甲冑はやられはせんぞっ! ハッハッハァ!!」
そんな事はお構い無く、フィリスは魔法を使った。
「魔道力! エナジーブレイクッ!!」
キャスターロッドの制御を失ったフィリスの全魔力が、機械鎧を包みこむ。と同時にフィリスは気を失い、倒れた。
だがしかし。
「どっどうなっているのだ! 動かん! 鎧が動かんぞっ!!」
フィリスの魔法の影響か? 巨大カラクリ甲冑は途端にその動きを停止する。
「今だよ! やつは4〜5分、動けないはずだよ!!」
それを見てレオニードが間髪居れずに指示を出す。
レイモンドはその身の軽さを活かし、機械鎧の上へと駆け上って行くと、
「あっかんべーだぁ!」
と鎧の顔の前で悪党ボスを挑発するや、持っていた泥の塊を機械鎧の目の中へと押し込んだりもする。
「なっ生意気な小娘めっ! 我が鎧の顔に泥なんぞ塗りをってからに! くそう! メインカメラが潰されては前が見えんぞ! 仕方が無い! こうなったら有視界戦闘だ!!」
視界を奪われてはいかに強力な機械鎧とて、これでは形無しである。まずは鎧の上に登って悪さをしている小娘を引きずり降ろそうと、ボスは機械鎧のコクピットのハッチを開け、外へと身を乗り出した。
すると。
「くらえっ!」
空かさずユグンが、自慢の電撃発生剣でボスを攻撃する。がしかし。
「バカめ! このノーマルスーツはその程度の電撃など通さないのだよ」
と、ボスは自身が着ているツナギ服を自慢して見せたりもする。
ユグンはその隙に、目の前に有った赤いボタンを押した。
「ポチっとな!」
「きききっ貴様っ!! なななっ何を押した!」
”ジゲンバクハソウチガ サドウシマシタ ”
たちまち操縦席内に流れ出したアナウンスの声に、ボスは飛び上がって驚くと、慌てて逃げ出し。
「おのれーー! これで勝ったと思うなよ小僧っ! このTR(機動メカ)の性能のお陰だと言うことを、おぼえておくがいい!」
そんな捨て台詞を残したりもする。
そして。
閃光とともに、機械鎧はこっぱみじんに吹き飛び、俺たちはこの戦いに勝利したのだった。
つづく