Bitter about youA-2
白い空間。
あなたの部屋。
私の横で眠るあなた…晃司の顔。
安心しきった表情。
長い睫毛が微かに揺れるのを、無機質な眼差しでじっと見つめた。
寄せ合った躰が暖かい。
シーツに絡む自身の長い黒髪。
晃司の金に近い髪に幾つもの銀ピアス。
この白い部屋にはミスマッチだと、いつもそう思う。
「ねえ、晃司」
そっと囁いた。
「あなたを殺したいの」
無論、何の反応もない。
太く逞しい首に指を這わせた。
「ん……」
低く呻きながら薄らと彼が目を開く。
私は真っすぐにその目を見つめた。
返される視線。
優しげな眼差しが私に絡み付く。
ふいに、その瞳が切なげに陰った。
「嫌な夢を見た」
「…………」
「最近、よく見るんだ」
「どんな夢?」
…私はもう、夢なんて見なくなってしまったわ。
「昔の…夢」
呟く時、やはり彼は私から目を逸らした。
そう。昔の夢なの。
…その中に、私の妹は出てくるのかしら?
「繭未…」
籠もる声で名を囁き、壊れ物を扱うようにそっと私を抱き寄せる。
黒い髪がさらさらと音を立てた。
「愛してる…繭未」
私は目を閉じた。
彼の堅くて広い背にゆっくりと手を回す。
音が漏れないよう
静かに歯を食い縛った。
涙が溢れないよう、目蓋を強く塞ぐ。
(私‥私は…私も……)
そう――‥
私はあなたを――‥
「愛してるわ…私も」
愛して しまったの…
無音の白い部屋と
私を抱くあなたと
あなたに抱かれる私と
震える声。
仁未の笑い声が聞こえた気がして
…私は 耳を塞いだ。