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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈波動篇〉-2

「強い。ナルの占いでさえ入り込めへん程の結界やった。それにあの力は…とてつもない威力や。」

「とてつもない?」

「力と力の干渉で空間を切り裂いたんや。かまいたちみたいな…。」

紅奈の言葉に貴未は深く頷いた。腕を組み、記憶を探りながら話すからか目はどこをとらえているか分からない。

「確かに…兵士は皆、特殊能力を持ち合わせていない。なのに単独で壁を爆発で壊してしまう力を持った人物。」

少しずつあの日の出来事が分かってきた。すれ違っただけの貴未、遠くからだが姿を見た紅奈、何も分からないが外の状況に詳しい聖。

「侵入者は一人、か。」

「赤い瞳の、炎を操る男らしい。だろ?紅奈。」

「いや、侵入者は二人。かもしれん。」

確かに紅奈が見たときはヴィアルアイとロワーヌが二人で玲蘭華とジンロに対抗していた。漆黒のウェーブのかかった長い髪の女性、きっと侵入者である男の仲間なのだろう。

「共犯者がいたのか…女の方は何をしてたんだろ?」

「気になる言い方したな、紅奈。他に誰かおってんか?」

聖の声に紅奈は考えをまとめながら頷いた。甦る記憶、あの時ナルを呼びにきた女性と結界の前にいた青年、どことなくナルとは顔見知りのような雰囲気をだしていた。

そして侵入者と戦っていた二人組。見たこともない衣裳を身にまとい、侵入者と同じくらい強い力の持ち主。

「なんでそいつらが侵入者じゃないって分かるんだよ?」

「まぁ、ナルと普通に会話してたってのもあるんやけどな。」

紅奈はリアルにあの出来事を思い出そうとしていた。ひとつひとつ、彼らの動きをたどってゆく。

たしかナルを呼びにきた女性は瑛琳(えいりん)と呼ばれ、青年は千羅(せんら)と呼ばれていた。ナルは千羅に結界を破る方法を提案したし、彼らもそれに素直に従った。そして彼らは侵入者の赤い目の男を、驚きを隠せずにヴィアルアイと叫んでいた。

何より結界を破った後、瑛琳はサルス達を守り、千羅は胸に剣を刺されたカルサのもとへ真っ先に向かった。その時、カルサを守るための言葉を放ったのがヴィアルアイと戦う女性。

決定的なのが彼女が最後に叫んだ言葉。

《占者ナル、後は貴方に》

「なるほど、ね。」

「侵入者っちゅう類でもないみたいやな。」

紅奈の話になんとなく今回の事態の全貌への糸口を掴んだようだった。これは御剣関係の戦いに間違いはなさそうだった。

 そうなると分からないところが一気に増え、それと同時に諦めもつく。知る術がないのだから。

ただ貴未には気になるところがある。あの時、ぼろぼろのナタルの何度も呟いた言葉の意味は、彼が回復しないかぎり解決されそうにもない。


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