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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈波動篇〉-12

「社も祷みたいに姿を変えられる?」

日向の言葉に社は頷くと、即座に実践してみせた。それはとても美しく、鮮やかな浅葱色の羽を持った鳥の姿を見せた。ながく伸びた羽冠と尾は風を感じ、なびかせている。

それに合わせて祷も小動物に姿を変え、日向の肩に乗った。それを確認すると日向は出口に向けて足を進めた、その瞬間に緊張が走った。

日向の目に映ったのは二つの人影、暗くてよく形が分からない。

「誰だ!?」

「それはこっちの台詞だ。」

低く威圧感のある声。声の主はゆっくりと足を踏み出し、確実に日向に近づいていく。

影から出てきた二人はやがてその姿をさらした。男女二人組、二人の出す空気に日向は気負けしそうだった。

「なんだよ…。」

強い眼差しは物言わず真っすぐに日向に向けられていた。確実に距離が縮まっていく、二人の姿が鮮明になるにつれ肩にいた祷が小さな声で呟いた。

《榎、雅…!?》

「えのき…みやび?」

「それはオレたちの精霊の名だ。」

日向の目の前まで来た二人はしばらくの間彼を見つめていた。男はゆっくりと両手を差し出す。思わず日向は身を退いた。

「手荒な真似はしない。ただその人を返してほしいだけだ。」

今までの顔付きとは違って優しく、とても切ない表情で手を差し出している。警戒し固くなっていた体から力が抜けていく。




「大切な人の、大切な女性なんだ。」

その姿があまりにも切なくて衝動的に彼に引き渡したくなったのを必死にこらえた。

「社、祷、どうしたらいい?」

目線はそのまま、結論を二人に日向は預けた。必然的に決定権は社に移される。

《あなた方は元素の力を持つ者…榎、雅がその証拠。日向殿、主人をお渡し下さい。》

社の言葉を受け、日向はゆっくりとリュナを目の前に手を広げて待つ彼に預けた。彼の腕の中にリュナが納まった瞬間、傍にいた女性もよりそいリュナを見つめる。

安心しきった笑顔。日向たちは黙ってその様子を見ていた。

「リュナ…やっと会えた。」

言葉の通り懐かしむようにリュナの姿を見つめる二人には、張り詰めていた心が溶かされるような空気があった。

「鍵は…あなただったのね。火の力を持つ人、名前を教えてくれる?」

「日向。」

「ありがとう、日向…。私は瑛琳、彼は千羅。私達はリュナの仲間なのよ。」

瑛琳はそう言うと一歩前に出て手を差し出し握手を求めた。日向はあわててその手を握る。


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