婚約者 〜被虐〜-6
「おはようございます」
「きゃあ!?」
文字通りに、響美は飛び上がる。
部屋の唯一の出入口と思われるドアから、一人の少年が顔を出していた。
年齢は十三、四といった所だろうか。
アンティークドールが生命を得て動き出したかのような、古典的だが古臭くはない顔立ちの垢抜けた美少年だ。
「あ、あなたは……?」
震える声で響美が尋ねると、少年はにこりと微笑む。
「僕は大瀧忍(おおたき しのぶ)、忍とだけお呼び下さい。お坊ちゃまより、あなたのお世話を命じられた者です」
「せ、世話……?」
「あなたの身の回りに関する全ての事は、僕が世話をするという事です。さっそくですが、朝食の準備が出来ておりますので食堂へいらして下さい」
少年――大瀧忍が顔を引っ込めると、響美はベッドから抜け出した。
あれからどれほど眠っていたのかは分からないが体力を消耗し、またお腹が空いている。
食堂へ行くと忍がテーブルの脇で、響美の事を待っていた。
引いてくれた椅子に腰掛けると、忍は食堂から出て行く。
忍はすぐに、ワゴンを押して戻って来た。
「?」
響美は、眉を寄せる。
「どうぞ」
忍は、手際良く食事を供した。
野菜と鶏肉をこっくりと煮込んだスープ。
焼きたてのバターロール。
茹で卵と温野菜のサラダ。
美味しそうな湯気を立てるそれらを見て、響美は唾を飲み込んだ。
いそいそとスプーンを手に取り、スープを一口飲む。
具材をたっぷり煮込んだスープは、疲れた体に優しかった。
――食事を終える頃、神取がやって来る。
「おはようございます」
思わず体を硬くする響美に対し、神取は平然と挨拶してきた。
言語を解し、発する『ペット』に、情けは不要という事か……。
響美は、唇を噛む。
「本日は聖治様直々の調教を受けていただきます。忍、制服を着せて上げて下さい」
「はい」
「響美。何か質問はありますか?」
いきなり水を向けられて、響美は驚いた。
「……一つ、あります」
「何でしょう?」
「この方、忍さんとは別人では?」
名指しされた忍は、驚いて後ずさる。
「……何故そのように思いましたか?」
神取の言葉に、響美は答えた。
「何となく。匂いが違う、とでも言えばいいのかな……」
神取と忍は、顔を見合わせる。
「……おっしゃる通り。僕は、忍ではありません」
忍――いや、忍とそっくりな少年は、食堂の外へ声をかけた。
「忍!」
すぐに入って来たのは……同じ顔をした少年。
「兄の大瀧忍です」
「弟の、大瀧語(おおたき かたる)です」
「一卵性双生児……」
響美は、思わず呟く。
大瀧語は、肩をすくめた。
「僕達双子を見分ける事が出来るのは、お坊ちゃまと兄上だけだったんですがね……」
「実の父ですら見分けられないのに……初めて僕らを見た方から見破られるとは、正直言って驚きです」
声も仕草も物腰も、何から何までそっくりだ。
『あなたの事、気に入りましたよ』
声を揃えて、双子は言う。
「神取さん」
「僕達も、調教に参加しましょう」
神取は、苦笑した。
「壊さない程度にな」
『もちろん』
新たなトラブルを自ら招いた事を知って、響美は青くなっていた……。
「違う。もっと丁寧にカリを舐めて」
「そう……時々目線を上げて。そうすれば、聖治様がとてもお悦びになる」
「ほら、手を休ませたら駄目だよ」
登校中の車内で響美は聖治の股間に顔を伏せ、口唇愛戯の訓練をしていた。
「ん、んぷ、ん、ん、ん……」
聖治は目を細め、たどたどしいが熱心な愛撫を楽しんでいる。
元から素質があるらしく、車に乗ってからの僅かな時間で、響美は多少のテクニックを身に付けていた。
――今日は一日中聖治の傍にいて調教を受けるので、特別に服を着る事が許されている。
着ている物は、漆黒の上下。
パフスリーブの長袖ブラウスに、膝丈のふんわりしたスカート。
頭には、レースで装飾された髪留め。
足元は三つ折りの白色ソックスに、よく磨き込まれた靴。
いわゆるメイドスタイルだったが、下着を着ける事は許されていなかった。
「くぷ……」
肉棒から口を離し、響美は息をつく。
だがその間、手は休めない。
「響美は本当に淫乱だね……」
「淫乱な子には、ご褒美を与えないと」
つぷっ!
「ひあうっ!?」
忍がスカートをめくり、語の中指が排泄口に突き立てられた。
「かはっ……ん、ううう……!」
排泄口は抵抗なく指を受け入れ、滑らかな抽送に合わせてぬぷぬぷと音を出している。