冬・指・2人-1
『てかさ、もぅクリスマス』
冷えきった手を擦りあわせ、その中に息を送り込む。それでも一行に暖まらない手が行き場を求めていた。私は冷え症なのだ。
『今年も1人なのかな』
校庭の隅で、まだ明かりのついている校舎を眺め空を仰いだ。
別に私は1人でもいいのだ。隣に君がいて、こうして笑っていられたら。
『今年は1人はヤだな』
思わず君の顔を見ると鼻の頭を真っ赤にした君が笑った。私はわざと両手を顔に覆い自分の鼻を隠した。
『…なんで?』
隣にかすかな温もりを感じながら、君に嫉妬する。
『寂しいじゃん?』
おそらく笑っているだろう君を見れない。原因は君の鼻にあった。私は、君にはカッコ悪い所を見られたくない。
『…そぅかも。寂しいね』
笑いながら話すと、白い息が指の隙間から溢れた。
『寒いな』
君がポケットに手を入れて体をちぢこませる。
『寒いけどー、寒いって言ったらもっと寒くなる』
ポケットのない服の私の手は顔の前でしか生きていくことが出来ない。
『…何、冷たいじゃん』
冷たい指が暖かい指に包まれる。私の顔に一気に冷たい空気が刺さる。
『あ、ありがとう』
『何言ってんの、いいって』
一生懸命暖めようとする君の指。嬉しかった。
いきなり、君は私の全身を抱き締めた。
『こっちのがいい?』
君の香りが心地よくて
でも、ドキドキが消えなくて
『うん』としか返せない。
『ねぇ、好きなんだけど』
耳元で囁くその低い声。
『私も…』
ほほを伝う涙で君が笑っているのかさえ分からなかった。