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刃に心
【コメディ 恋愛小説】

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刃に心《第6話・愉快に誘拐》-4

◆◇◆◇◆◇◆◇

階段を駆け上がり、角を曲がってその突き当たりには部室が見える。
その時、闇の中から現れる黒い影達。いずれも疾風と似た忍装束だった。

「同業者か」

疾風の声が静かに校舎に響いた。

「俺に何の用だ?」

忍者達は答えない。敵は全部で四人。その全員が無言で忍者刀を抜いた。
疾風も鎖付き匕首を逆手に構えた。疾風の瞳が冷気を帯びる。
場の空気が張り詰める。ジリジリと少しずつ間合いが縮まっていく。
堪え切れずに、一人が飛び出した。
その瞬間に疾風は相手の懐に潜ると匕首の峰で腹を打ち付ける。続けて容赦のない貫き手を鳩尾に突き入れ、相手の意識を奪った。
気絶した相手の背後で仲間が苦無を取り出し、投擲の態勢。
疾風は枝垂れかかる男を蹴り、仲間の元へと返却。当然、投擲を中止し、横に避ける忍者達。
疾風は数歩で距離を詰めて一人に迫った。
相手は忍者刀を水平に薙いだ。しかし、疾風の姿がかき消える。
驚く相手。その足下で疾風が床に手をつき、自らの足を高々と振りかぶった。
逆立ちの状態からその勢いを殺すことなく、上げた足を相手の顔面に振り降ろした。踵が顔面に深々とめり込んで、KO。
その勢いを最後まで保ち、再度、地に足を付ける。
疾風は男を軽く蹴飛ばした。右足を軸に素早く回転し、構え直す。
残りの二人はまだ来ない。少し間合いを開いて、隙を窺っている。

一人が細長い筒を取り出し、覆面を少しずらして口に咥えた。
間髪入れずにプッと息を込める。射出された鋭い銀の針が闇夜にきらめいた。

「ッ…」

予想外の早さ。疾風は身体を捻って躱した。
しかし、切れ間無く放たれる針。全てを躱すことはできなかった。
疾風の右手の甲に針が刺さる。鋭い痛みが全身を駆け巡った。
だが、疾風はそれと同時に左手で匕首を投げ、一方の男の首を鎖で捕縛。
鎖を引いた。
勢い良く倒れた男は冷たい廊下とくちづけを交わす。
最後の一人が慌てて吹矢を取り出した。
疾風は瞬時に間合いを詰めると下から手を蹴り上げ、吹矢を飛ばす。そこから、一気に足を相手の肩に振り下ろし、引っ掛けたまま地面に叩き付ける。

「…」

無言で疾風は相手を見下ろした。誰も立ち上がる気配は無い。

「くっ…」

右腕に痺れる様な痛み。
痛みを堪えて右腕を上げ、針を抜いた。

「…迂闊」

刺さった箇所が赤く腫れてきている。見た感じと現在の症状、それらから弱めの神経毒であると判断。

「…左手一本でいけるか?」

そう呟いて、すぐに首を小さく横に振った。
無駄な自問自答だ…
左手一本だろうが、結局のところやるしかないのだから…

疾風は転がる忍者達に背を向け、演劇部の部室の扉を開いた。


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