大切なもの-3
◆ ◆ ◆
──次の日。
ひろはるは、昼休みに興奮しながらおれのもとへやってきた。
楽しそうだ…。
「わ、渡した!」
おー。
「返事は少し考えさせてって。まぁ俺のことよく知らないから、当然だよなっ」
「へぇ。よく分からないけど、手応えありそうじゃん、良かったな」
ひろはるは決して格好悪い男ではない。
どちらかというとモテるタイプだし、ファンが数名いるのを知っている。
それに鈍感なこいつだから、惚れると一途になっちまうのかな。
えらく興奮してるし。
ひろはるはこの日、それだけを言うと午後の授業をボイコット。
帰ってしまった。
帰り。
事件は起きた。
一人帰ろうと廊下を歩いていると、向こうから3人組の女子がやってきた。
真ん中には、噂の女、宮田リカ。
ひろはるがほれるだけあって確かにかわいいな。
きゃあきゃあ騒ぎながらやってくる彼女たちの話が耳に入り、俺は唖然とした。
「──ぇ〜まっぢぃ。いまどき手紙?!」
2人の女子が宮田に質問。
なんと宮田は、
『そうっ、ほんと気持ち悪かった〜…もらったけど捨てちゃった』
トクン──。
「じゃぁもらわないで断れば良かったんじゃん??」
『顔はちょっとタイプだったからね〜、でも切り捨てっ。あんな怖い顔で見られたらもらわないわけにはいかないよっ。時代遅れはきら〜い』
「ひっどー、悪だね〜リカは、きゃはははっ」
…………ばかげてる…。
すれ違ったあとの3人組におれは睨み付けた。
当然気付くはずもない。
宮田リカ。
お前がすげーのは、外見だけのようだな。
なんつー幼稚な会話だ。
ひろはる。お前には悪いがあきらめろ。
…俺はその日、走って帰った。