『 初恋 』-4
※ ※ ※
あわてて除細動器を患者に押しあてようとするスタッフを手で制すると、主任医師は辛そうに首を振った。
「もう無理だ。彼女は向こうに行ってしまったよ……」
※ ※ ※
あなたに会えてよかった。
あの時の約束は叶わないけれど、ずっとずっと気になってた、あなたが幸せになれてよかった。
あなたの背中がなみだでにじんでく……
何もかもがぼやけ、かすんでいく……
あなたに会えてよかった……
※ ※ ※
「主任! これ……」
重苦しい雰囲気の中、職業的な態度を崩すまいと、遺体の身体からテキパキとリード線を外していたスタッフの一人が、思わず手をとめて主任医師を呼んだ。
遺体の頬を一筋のなみだが流れおちる。
その頬は紅く染まり、どこか笑っているように見えた。
主任医師はガーゼで遺体の頬を優しくぬぐう。
「きっと、楽しい夢をみたに違いないよ……」
End