痛みキャンディ3-1
闇の中に何かを探すことは一片の勇気と決心があれば容易にできる……
昔誰かにおれはそう言われた事を思い出した。
夢の中でおれは今日の出来事を反芻していた。
死の痛み。
別れの哀しみがちょっぴり分かって……
怖くなった。
前途はまだ暗い。
おれは…
おれはいつになったらこの暗闇を這い出せるのだろうか。
答えは出ない。
それでよかった。
そんな闇をいつしか好むようになっていたから。
朝になると自然に目が覚めるのは何でだろう?
毎朝決った時間になるとおれの1日のタイマーが作動して活動を始める。
昨日はわかったその痛みもこんな朝はぼんやりと霞んでしまう。
おれにはまだわからない。
今日もクゥは元気よく飛び跳ねている。
今日もクゥの朝飯を用意してからおれは目的のない徘徊を始める。
たまにはクゥと戯れて1日をおわらせてもよかった。
しかし何故かおれはいてもたってもいられなくなり、外の世界へと吸い込まれてゆく。
今日も途方もない経路でひたすら歩いた。
ぼんやりしながら。
傍からみたら不審者か目的のない暇人としか映らないだろう。
この行動がおれができる唯一の自分自身へのセラピーのつもりだった。
夕方気が付くと駅にいた。
何処をどう歩いたのだろう。
夕焼けは見たくない。
何か張り裂けそうになるから。
きれいに紅く街を染めながら何かを訴えかけてくる夕焼け空。
そんな空色におれは目を向けないように駅の待合室で腰を降ろした。
そこには疎らに人が誰かを待ち侘びていた。
ある者は忙しなく、また他の男女は出会いを心から歓びあいながら。
おれの横にはおじいさんが疲れた表情で腰を降ろしていた。
その表情は何処か諦めが交じった哀しいものだった。
「まだこんのか…」
ため息混じりに煙草の煙を吐き出した。
誰かを待っているのだろう。
一瞬瞳が涙色に光るのをおれは見逃さなかった。
待っている誰かは来ないのかもしれない。
おれはポケットから飴を取り出した。
柑橘系とヨーグルトを足したような味がした。
何かがやはりまたおれの心を突く。
それは淋しさか…
それとも。