寒い日だから-1
冬って嫌い。
ハァーと白い息を、擦り合わせた手にかけながら、しかめっ面の彼女がぼやいた。
「俺は好きだけどな…」
空を仰ぎ、何の気無しにぼそりと呟いた。
その声が聞こえたのか、彼女は更に眉間に皺を寄せてこちらを睨んでいる。
へらっと苦笑いをしてみるけれど、機嫌は悪化するばかり。
はぁー
参ったなぁ。
怒らせるつもりじゃなかったんだけどなぁ…ただ思ってることを言っただけ。
……だってさぁ
「だって、冬はこーゆーことが出来るじゃん?」
にこっと笑って彼女を見ると、耳まで真っ赤にして俯いている。
可愛いなぁ。
俺の顔は緩むばかり。
心まで暖かくなる。
俺のポケットの中には、俺の手と、キュッと握り締めた冷たく小さな君の手。
こうすれば寒くないだろ?
寒がりな君と過ごす冬、俺は好きだけどな。